ADHDと実行機能障害?

2017年8月28日 月曜日

注意欠如多動性障害(ADHD)は、一般に多くの人に知られるようになり、「集中力がなく、不注意で、ケアレスミスをしやすい」「多動で落ち着きがない」などの症状がみられる病気と理解されています。このような理解は正しいのですが、この他にも「優先順位がつけられない」「計画性がない」「言われたことを忘れてしまいやすい」などの症状もみられます。一般に知られているよりも、ADHDの症状は数多くあるのです。

このような症状はなぜ起こるのでしょうか?性格的なものでしょうか?あるいは、親の育て方が悪いからなのでしょうか?ADHDの症状は脳の「実行機能の障害」により起こると考えられています。実行機能とは目的を達成するために必要な脳の機能のことです。目標達成のために自分をコントロールし、処理を進めていく脳の機能とも言えます。ADHDではこの実行機能がうまく働いておらず、行動がちぐはぐになってしまいます。いい加減な人だから症状が出ているわけではありません。

ADHDでは、焦点化という実行機能が障害されているため、目標に集中し続けることが難しくなります。取り掛かりという実行機能が障害されているため、やるべきことに優先順位をつけて取り掛かることが苦手です。また、記憶という実行機能も障害されているため、メモする程でもない簡単なことをすぐに忘れてしまいます。この他にもいくつかの実行機能の障害がADHDの症状に関係していることが知られています。

ADHDの方は、他人から見たらとてもいい加減で、やる気がない人に見えてしまいます。不注意によるミスが多いと、信用を失い、大切な仕事を任せてもらえなくなります。実行機能障害は脳の前頭葉、特に前頭前野背外側部と呼ばれる部分の障害で、いい加減な人だからではありません。 親の育て方が悪いからでもありません。ADHDの実行機能障害は、治療により改善する可能性が高いので、諦めることなく、早めに治療を受けることをお勧めします。

院長 高橋道宏

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