2016年8月6日
こころの病気の方は、よく不安になりますが、こころの病気でなくても不安になります。こころの病気による不安とそうではない普通の不安、この二つの違いは一体どこにあるのでしょうか?こころの病気による不安にはどのような特徴があるのでしょうか?
不安は俗に心配事などともいわれますが、心の病気による不安は、実際にはあまり心配する必要のないことに対して過剰に不安になっている状態です。この点が普通の不安とは異なっています。心の病気による不安は、現実にはあまり心配する必要のないことを過剰に心配している状態なのです。
しかし、心配している当事者にとっては決して過剰な不安ではなく、まさにリアルにそのことが本当に心配なのです。これは頭の中で心配事を深刻なものと錯覚し、誤解してしまっているのです。感覚的にいうなら、本当は1か2心配すれば良いことを、9か10位心配している状態なのです。
ですからこころの病気による不安は、本当はあまり根拠のないことを過剰に心配しているということをよく理解する必要があります。不安で追い詰められて来ると、自律神経が乱れ、動悸、息切れ、過呼吸、喉がつまった感じなどの身体症状も出てきます。
こころの病気による不安の特徴は、不安にとらわれることです。いつも心配事について考えてばかりいて、心配事が頭から離れないのです。「とらわれ」です。不安に対するとらわれが始まると、ますますとらわれが強くなり、どんどん不安が増幅する悪循環に陥ります。このとらわれがこころの病気による不安の特徴です。
ですから、このような不安を乗り越えるためには、まずとらわれから解放される必要があります。どのようにしたらとらわれから解放されるのでしょうか?とらわれから解放されるためには、まず心配事について考える時間を減らす必要があります。
そのためには、心配事について考えるのをやめようとするより、心配事以外のことに目を向けていくことがより大切です。私たちが日常生活の中でなすべきことは多くありますが、不安について考え始めると、必要なことをそっちのけにして不安について考えていることが少なくありません。
ですから不安があっても私たちの日常生活の手を止めずに、私たちがその場その場でなすべきことを着実にやっていくことが大切です。私たちが日々なすべきことを着実に行うことにより、徐々に心配事を考える時間を減らすことができます。このような行動の繰り返しがとらわれから解放される近道なのです。
院長 高橋道彦