不安障害の治療におけるお薬の役割

2018年10月8日  月曜日

不安障害の治療では、不安な気持ちをどう受けとめ、どのように日々を過ごすべきかを理解し、また行動していくことが大切です。

その意味で、神経症の治療で用いられる森田療法は、「症状にとらわれず、あるがままに受けとめる」「症状にとらわれず、為すべきことは為す」など生活指針をわかりやすく提供しています。

しかしながら、こうした心理面に働きかける治療は、どう行動すべきかを理解しても、実際にそれだけで不安を乗り越え完治するのは、ほんの一握りの患者さんです。

大半の方は、大きな不安に遭遇すると、不安に心がとらわれてしまいます。すると不安が不安を呼び、治りにくい状況が生じてしまうのです。

このため、不安障害の治療では、不安を和らげるお薬による治療がとても役立ちます。かつては抗不安薬と呼ばれるお薬を常時服用するのが一般的でした。しかし、ここ10年位の間にこのような治療の流れは大きな変化を迎えています。

SSRIと呼ばれる抗うつ薬が不安症状に効果があることがわかって以来、SSRIをお薬による治療の中心にすることがより一般的になってきました。

SSRIは不安に関する脳内メカニズムのより根本的なところに作用しています。このためSSRIを服用すると不安が起きにくくなっていきます。不安が起きにくくなると、先程述べた森田療法による治療がより実施しやすくなります。

SSRIを服用しても、時と場合によっては大きな不安が起きることがあります。このような時には抗不安薬を頓服として服用すると良いのです。抗不安薬は即効性があるからです。

SSRIをお薬による治療の中心とし、抗不安薬を頓服として使用する、その上で森田療法を行う。このような治療を続けると、内的な不安が徐々に解消されていきます。

内的な不安が解消され、自信が出てきたら、徐々にお薬を減量していきます。SSRIは依存性がないので、お薬を減らす事はあまり難しくありません。ただし、薬を減らす時は主治医と相談しながらやりましょう。

最終的には薬がなくても何とか不安を乗り越えていくことができるメンタルヘルスを回復することが治療の目標なのです。

院長  高橋道宏

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