2019年11月4日(月)
最近は世間の理解が進み、うつ病になると「ゆっくりと休んで下さい」と優しい言葉をかけられることが多くなりました。
しかし病気が長引くと、家族や知人から「やる気がない」「病気を治そうとしていない」などと批判的に言われてしまうことがあります。
本当にそうなのでしょうか?うつ病になる方は元々やる気がない人なのでしょうか?頑張ればやれるのにやらないだけの状態なのでしょうか?
うつ病になる方の多くは、とても几帳面で意欲的です。日本の精神学者、下田光造氏1885‐1978)は、うつ病になる方の性格特徴について、几帳面、きまじめ、責任感や正義感が強く、凝り性で、仕事熱心といった特徴をあげています(執着気質)。
執着気質の方は、ごまかし、大雑把なことを嫌い、なにごとも徹底的にやらなければ気がすみません。決して病気に甘んじているわけではありません。やりたくても思うようにできない自分が歯がゆくて仕方ないのです。
思うように活動できないのは、心と身体の疲れ過ぎのためです。脳科学的に言えば、脳内のエネルギー不足ということになります。脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどの機能が低下しているのです。
セロトニンは感情や意欲に最も関係する神経伝達物質です。ですから、休養すること、セロトニンの脳内濃度を増やす抗うつ薬を服用することで脳内エネルギーを元通りにすることがうつ病の回復につながるのです。
うつ病は治療により順調に回復しますが、回復してくると外見上あまり病気に見えません。このような時に誤解を受け、前述のような批判的な言葉をかけられることが多いのです。
外見ではある程度元気そうに見えても、まだ回復が始まったばかりの時は、まだ回復力が弱く、ちょっとしたことをしても、すぐに疲れてしまいます。
うつ病の方は元々責任感が強く、回復期に頑張りすぎ、空回りすることが多いです。周囲の理解を得つつ、自分の気持ちにもブレーキをかけながら少しづつ活動の場を広げていくことがうつ病回復の秘訣です。
院長 高橋道宏