アルコール依存症の減酒治療:治療を受けやすくする新たなアプローチ
2023年9月18日(月)
アルコール依存症は、大量の長期飲酒が精神と身体に害を及ぼします。アルコールが体内から抜けると、イライラや神経過敏、不眠などの離脱症状が現れ、これらの症状を和らげるために再び飲酒する悪循環が生じます。
患者さんはしばしば病気を認めづらく、治療を受けたがりません。また、これまでのアルコール治療が厳格過ぎることが、患者さんが治療を受けたがらない理由の一つです。
アルコール依存性の本質は飲酒量を自己コントロールできない障害にあります。これまでの治療法では、アルコール依存症の程度にかかわらず、アルコールを完全に断つ断酒による治療が行われてきました。
しかしながら、このアプローチは非常に厳格です。断酒が一切許容されないと感じると、通院することに抵抗を感じる方も多く存在します。断酒はハードルの高い治療法で、患者さんが治療を受けたがらない大きな理由の一つとなっています。
そこで、近年では「減酒治療」という新しい方法が登場し、アルコール依存症への対応の幅が広がっています。この方法では、徐々に飲酒量を減らしていくアプローチを採用し、患者さんがアルコール摂取の自己コントロールを取り戻しています。
減酒治療を支援するために、近年では飲酒量低減薬も利用されています。この治療薬は、アルコールを摂取する前に服用することで、飲酒欲求を抑制します。
アルコール摂取時に快感を生み出すβエンドルフィンが分泌され、そのために飲酒を継続しようとするのですが、飲酒量低減薬はこの過程をブロックします。この結果、飲酒欲求が自然に減っていきます。
減酒治療は軽度のアルコール依存症の患者さんに有効です。初めてアルコール依存性の治療を受ける方にもアクセスしやすい方法で、多くの方々が依存症の改善に取り組んでいます。
新たな減酒治療のアプローチは、アルコール依存症を抱える方々にとって、より取り組みやすい選択肢であり、治療の第一歩を踏み出す支援となっています。
アルコール依存性は進行性の病気です。放置すると、依存が進み、入院治療が必要になります。将来の悪化を予防するためにも、通院治療で対応できるうちに、早急に治療を開始しましょう。