ストレスとの闘い:適応障害とうつ病の微妙な違い

2023年11月20日(月)

適応障害は、うつ、不安、動悸、めまいなどの症状がストレスによって引き起こされる状態です。このような症状はうつ病でも見られ、うつ病との類似点がありますが、違いも存在します。

適応障害の症状は、ストレスが解消されると速やかに改善していきます。一方で、うつ病は病気の原因となったストレスがなくなっても、症状が続きます。

適応障害になると、仕事や学校にいけない、家事ができなくなるなど、日常生活がままならなくなります。

統計によれば、人口の1%ほどが適応障害にかかると言われていますが、当院では心の健康問題による休職者の多くが適応障害で苦しんでいます。

適応障害の発症には、明確なストレスが関与しています。パワハラ、いじめ、仕事の重圧、家族の不仲などがその一例です。一方で、うつ病では原因となるストレスが特定できないことも多々あります。

精神的なストレスは、人それぞれ感じ方が異なり、ストレスに対する耐久力も一人ひとり異なります。適応障害になる方は、元々新しい環境にストレスを感じやすい、いつもと違う状況で不安になりやすいなど、心の特徴があります。

適応障害の治療は、ストレスから離れることとストレスへの適応力を向上させることが重要です。抗うつ薬などが使用されることもありますが、これはあくまで対症療法であり、根本的な治療ではありません。

適応障害はストレスによって引き起こされるため、可能な限りストレスを軽減することが重要です。休職などで一時的にストレスから離れることも症状の軽減に役立ちます。同時に、ストレスコーピングなどの心理的アプローチを取り入れ、ストレスへの対処力を向上させることが重要です。

適応障害とうつ病は症状が似ていますが、適応障害からうつ病へと移行してしまう人も多くいます。適応障害は長くても6ヶ月程度で治っていきます。症状が長期化し、悪化した場合は、うつ病に移行してしまいます。

適応障害と診断された40%が5年後にうつに移行したとの研究データもあります。適応障害はうつ病などの前段階である可能性もあるのです。

したがって、適応障害の段階で的確な治療を受け、症状の慢性化を防ぎ、うつ病の予防に取り組むことが非常に重要です。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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