2024年10月14日(月)
うつ病は、私たちの心と体に大きな負担をかけます。
特に家庭を支える主婦にとっては、家事や育児、時には仕事までこなしながら自分自身の心のケアを行うのは非常に難しいことです。
厚生労働省のデータによると、うつ病を経験する女性の割合は男性の約2倍と言われており、その背景には家庭内の役割の多さや、プレッシャーが関係しています。
その中でも「食事の準備」は、日々の生活における大きな負担の一つです。
家族の健康を支えるために重要な食事作りですが、うつ病を抱えている主婦にとっては、その負担が余計に心を圧迫することがあります。
そこで、思い切って「食事を作るのをやめる」という選択肢を提案したいと思います。
「食事を作るのをやめる」と聞くと、家族に対する責任感や罪悪感を抱く方も多いかもしれませんが、これは一時的な休息と考えてください。
あなたがまず健康でなければ、家族を支えることもできません。
自分を労わることが、結果的に家族全体にも良い影響を与えるのです。
食事作りがうつを悪化させる理由
1. プレッシャーと完璧主義
多くの主婦は「毎日栄養バランスの取れた食事を提供しなければならない」と感じています。
特に子どもがいる場合、成長や健康に気を使い、日々のメニューを考えるプレッシャーがのしかかります。
夕食の準備が間に合わなかったり、家族が特定の食べたいものをリクエストしてくることに応えられないと、自己嫌悪に陥りやすくなります。
こうした状況が続くと、うつ状態がさらに悪化し、家族のために頑張るつもりが、結果的に自分を追い詰めてしまうことになります。
2. 体力と気力の消耗
うつ病の主な症状の一つは、エネルギーの低下です。
朝起きることさえ困難な日々が続く中で、買い物に行き、食材を選び、食事を作り、片付けるという一連の作業は非常に大変です。
休息が必要な時でも、食事の支度を優先しなければならないというプレッシャーがかかり、心身にさらなる負担をかけてしまいます。
3. 他の家事との両立が困難
食事作りは、他の家事と同時にこなさなければならないことが多くあります。
掃除や洗濯、子どもの世話など、日々のタスクは次々に押し寄せます。
うつ病の影響でこれらがスムーズにできない時、自分に対する苛立ちや焦燥感が増し、「できていない自分」に対するネガティブな感情が強まりやすくなります。
結果的に、うつの症状が悪化してしまうことも少なくありません。
「食事作りをやめる」という対策
では、具体的にどのようにして食事作りから解放されることができるのでしょうか?
そのためのいくつかの方法を紹介します。
1. 家族の協力を仰ぐ
家族に食事作りの負担を分担してもらうことは非常に重要です。
まず、夫や子どもに対して「今は自分が休むべき時期である」ということを正直に伝えましょう。
例えば、子どもに簡単な役割(お皿を並べる、サラダを作るなど)を与えることで、一緒に食事を準備することができます。
夫が休みの日には、料理を一緒に楽しむ時間を作るなど、家族全員が協力し合える環境を作ることが大切です。
2. デリバリーや簡単調理に切り替える
最近では、デリバリーサービスや簡単調理ができる食材キットが豊富に揃っています。
これらを利用して、手軽に食事を提供することも一つの選択肢です。
デリバリーを週に数回取り入れることで、調理の負担を軽減し、その分自分自身のリラックスタイムに時間を使うことができます。
毎日手作りにこだわる必要はないということを理解し、無理せず適度に手を抜きましょう。
3. 冷凍食品や作り置きを活用
うつ病の影響でエネルギーの波がある場合、調子の良い日にまとめて作り置きをしておくことで、翌日以降の負担が大幅に減ります。
市販の冷凍食品や作り置きのおかずを活用すれば、毎回の調理の手間を省き、短時間で済ませることが可能です。
また、調子が良い時に家族と一緒に料理を楽しむことで、家族とのコミュニケーションの場にもなります。
4. 主治医に相談する
もし食事作りや家事全般に対して強いストレスを感じている場合、主治医に相談することも有効です。
うつ病の症状には個人差があり、適切な治療やサポートが必要です。
主治医に相談することで、家事全般の負担を軽減する具体的な方法についてアドバイスを受けることができます。また、家族全員でアドバイスを共有し、より良い家庭環境を築くためのヒントを得ることもできます。
まとめ
食事作りは家族の健康を支えるために重要な要素ですが、それ以上にうつ病の治療では「自分自身の心と体の健康」を最優先にすることが大切です。
うつ病の治療は、無理をせず、できるだけ自分を大切にすることが重要です。
食事作りを一時的にやめたり、負担を軽減する工夫を取り入れることで、心の負担が軽くなり、うつ症状が和らぐかもしれません。
家族と話し合いながら、無理のない範囲で少しずつ負担を減らしていくことが、あなた自身だけでなく、家族全体にも良い結果をもたらすはずです。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏