2024年11月18日(月)
11月に入り、日が短くなるとともに少しずつ冬の気配を感じる季節になりました。この時期、「なんとなく気分が落ち込む」「やる気が出ない」と感じる人もいるかもしれません。もしかすると、それは 季節性うつ病(Seasonal Affective Disorder: SAD) の可能性があります。
今回は、この季節性うつ病の原因や症状、そして日常生活でできる対策についてお伝えします。
季節性うつ病とは?
季節性うつ病は、特定の季節(主に秋や冬)になると気分が落ち込み、春や夏になると回復する特徴があります。主に以下のような症状が現れます:
* 気分の落ち込み:特に朝が辛く、気分が沈む
* エネルギーの低下:疲れやすく、無気力になる
* 過眠・過食:特に炭水化物や甘いものを欲しくなる
* 集中力の低下:仕事や日常生活でミスが増える
* 人との交流を避ける:孤独感が強まる
原因は何か?
季節性うつ病の主な要因として、秋から冬にかけての短い日照時間による体内リズムの乱れが挙げられます。具体的には次のようなメカニズムが関係しています:
* セロトニンの減少:幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌が減り、気分が落ち込みやすくなる
* メラトニンの増加:暗い時間が長くなることで、睡眠ホルモンであるメラトニンが過剰に分泌され、だるさを感じやすくなる
* 体内時計の乱れ:日光を浴びる時間が少なくなり、体のリズムが崩れる
季節性うつ病の対策
これから冬本番に向けて気分を安定させるために、次のような対策を試してみましょう。
1. 日光を浴びる
日光を浴びることでセロトニンの分泌が促進され、気分の安定につながります。以下のような工夫をしてみてください:
* 朝の散歩を習慣化する:少し肌寒くても、朝の散歩で自然光を浴びることで体内リズムが整います。
* カーテンを開けて自然光を取り入れる:朝起きたらカーテンを開け、部屋に自然光を取り込むことを意識しましょう。
2. 規則正しい生活を心がける
毎日決まった時間に起床・就寝することで、体内リズムを整えましょう。また、適度な運動やバランスの良い食事も気分を安定させる助けになります。
3. ビタミンDの摂取
日光を浴びることで生成されるビタミンDは、気分の安定に重要な役割を果たします。冬に向けてサプリメントやビタミンDが豊富な食品(魚、卵、キノコ類)で補いましょう。
4. リラクゼーションや趣味を楽しむ
ストレスを軽減するために、自分の好きなことに時間を使うことも効果的です。たとえば、音楽を聴いたり、温かい飲み物を楽しみながら読書をするなど、心地よい時間を作りましょう。
5. 抗うつ薬を服用している方は飲み忘れに注意
うつ病の治療中で抗うつ薬を服用している方は、冬場には特に薬の飲み忘れに注意が必要です。日照時間が短くなることで症状が悪化しやすい季節でもあるため、医師の指示通りに薬を正しく服用することが大切です。飲み忘れを防ぐために、服用時間を決めて習慣化する工夫をしてみましょう。
6. 冬場は無理をしない
上記の対策を試しても気分がスッキリしない場合は、「冬場は無理をしない」という選択肢も大切です。寒い季節はどうしてもエネルギーが低下しがちです。やる気が出ない自分を責めず、「今は休む時期」と受け入れることで、気持ちが楽になることもあります。
* できる範囲で行動し、疲れたらしっかり休む
* 完璧を目指さず、「できることだけやる」という姿勢を心がける
* 自分に優しく、体を労わる時間を増やす
冬は春に向けて力を蓄える時期と考え、無理をせず、自分を多少甘やかしながら過ごすことが大切です。
冬の季節を穏やかに過ごすために
季節性うつ病は多くの人が経験するものですが、適切な対策を取ることで気分を改善することができます。11月の今のうちから日常生活に少しずつ対策を取り入れ、心と体を整えながら冬を迎えましょう。
また、冬は自分を多少甘やかしてもいい季節です。気分が落ち込む日があっても、それを無理に改善しようとせず、ゆったりとした時間を過ごすことも重要です。
これからの季節、ちょっと気分が落ち込みそうなときは、ぜひこの記事の対策を思い出して、穏やかに冬を乗り切ってください。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏