物忘れと認知症は違う

2025年3月3日(月)

年齢を重ねるにつれ、「最近、物忘れが増えたかもしれない」と感じることがあるかもしれません。そのようなとき、「もしかして認知症なのでは…」と不安に思われる方も少なくありません。しかし、物忘れと認知症はまったく異なるものです。単なる物忘れがすぐに認知症につながるわけではありません。加齢による物忘れと認知症はどう違うのでしょうか?

物忘れと認知症の違い

加齢による物忘れは、体験した出来事の一部を忘れることが多く、ヒントがあれば思い出せるのが特徴です。たとえば、「昨日の夕食は何を食べたかな?」と一瞬思い出せなくても、「確か魚料理だったような…」と考えているうちに思い出せることが多いです。
一方、認知症の場合は、食事をしたこと自体を忘れてしまいます。「昨日の夕食は何を食べた?」と尋ねても、「そもそも食事をしたことを覚えていない」といった状態になるのです。また、ヒントを与えられても思い出すことができない場合が多く、日常生活にも影響が出てきます。

加齢による物忘れは、日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。メモを取ったり、スマートフォンのアラーム機能を利用したりすれば、予定を忘れずに対応することができます。しかし、認知症の場合は、同じ話を何度も繰り返したり、約束をしたこと自体を忘れてしまうため、仕事や家庭での生活に影響が出ることがあります。また、加齢による物忘れは進行しにくいのに対し、認知症は時間の経過とともに進行し、判断力の低下や性格の変化が見られるようになることもあります。

「物忘れが気になる」と受診される方の多くは認知症ではありません。「最近、物忘れが多くなってきた気がする」と心配して受診される方がいらっしゃいます。しかし、そのような方の多くは、実際には認知症ではなく、年齢相応の物忘れであることがほとんどです。特に、几帳面で神経質な方ほど、ご自身の変化に敏感で、「このまま認知症になってしまうのではないか」と過度に不安になりがちです。

もちろん、気になる症状があれば医療機関を受診することは大切ですが、加齢による物忘れは誰にでも起こる自然な現象であり、必要以上に心配しすぎる必要はありません。

認知症の可能性がある場合のチェックポイント

認知症かどうかを判断するためには、いくつかのポイントがあります。

・日付や場所がわからなくなることが増えた
・簡単な計算や家事ができなくなってきた
・慣れた道で迷ってしまうことが多くなった。
・物を置いた場所を忘れ、家族や周囲の人のせいにすることが多くなった、

このような症状がある場合は、認知症の可能性が考えられますので、早めに専門医の診察を受けることをおすすめします。

認知症を予防するためにできること

認知症を予防するためには、日常生活の中で脳を活性化させることが大切です。読書や計算、パズルを楽しむことは、脳に良い刺激を与えます。また、新しい趣味を始めたり、楽器を演奏したりすることも効果的です。

適度な運動も、脳の健康維持に役立ちます。ウォーキングやストレッチなどを日常に取り入れることで、血流が良くなり、脳の機能を保つことができます。さらに、野菜や魚、ナッツ類を積極的に摂取し、糖分や塩分の摂りすぎを控えるなど、バランスの取れた食生活も重要です。

また、家族や友人との会話を大切にし、社会とのつながりを持つことも認知症予防につながります。人と関わることで脳が刺激され、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。

まとめ

加齢による物忘れと認知症は、根本的に異なるものです。単なる物忘れであれば、日常生活に大きな支障をきたすことはありません。しかし、認知症は進行する病気であり、放置すると生活に影響を及ぼすことがあります。

「物忘れが増えた」と感じたときに、すぐに認知症を疑う必要はありません。特に几帳面な方ほど、ご自身の変化を気にしすぎて、不安を抱えてしまうことがあります。まずは、「日常生活に支障が出ているかどうか」を振り返り、冷静に判断することが大切です。

もし気になる症状がある場合は、お一人で悩まず、早めに専門医に相談することをおすすめします。認知症の早期発見は、その後の生活の質を大きく左右します。また、普段から脳を活性化させる生活習慣を心がけることで、認知症の予防につながります。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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