過敏性腸症候群(IBS)は“心”のサイン? ― 腹痛・下痢・便秘が続くあなたへ ―

2025年4月7日(月)

「出かけるときに必ずトイレの場所を確認してしまう」
「緊張するとお腹が痛くなる」「便秘と下痢を繰り返している」

そんな症状に心当たりはありませんか?
検査をしても「異常なし」と言われるのに、お腹の不調が続く…。
このような状態は、過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。

■ IBSとはどんな病気?

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)は、腸に明らかな病気がないにもかかわらず、
腹痛や便通異常(下痢・便秘・ガスなど)が慢性的に続く状態を指します。

主に以下の4つのタイプがあります:

  • 下痢型:突然の腹痛と下痢が繰り返される
  • 便秘型:お腹の張りや不快感があるが排便が困難
  • 混合型:便秘と下痢が交互に現れる
  • 分類不能型:どれにもはっきり当てはまらないが症状が続く

IBSは軽く見られがちですが、日常生活に大きな支障をきたすこともある病気です。

■ なぜ“こころ”と関係があるのか?

IBSでは、腸の異常よりも、腸と脳のやりとりに注目されます。
脳と腸は神経系で密接につながっており、このバランスが乱れると腸が過敏に反応してしまうのです。

たとえば以下のような方に多く見られます:

  • 人間関係や仕事で常に気を遣っている
  • 責任感が強く、手を抜くことが苦手
  • 小さなことでも気になりやすい
  • 体調が悪くても我慢して頑張ってしまう

「自分は大丈夫」と思っていても、からだは正直です。
頑張り続けるうちに、体の中でも敏感な腸が先に変化を示すことがあります。
それがIBSという形で現れることもあるのです。

■ 治療の基本は「腸と生活の両面」から

IBSを改善するには、腸に対するケアと、生活の整え方の見直しが必要です。

<腸へのアプローチ>

  • 整腸剤、下痢止め、便秘薬などの服用
  • 食事内容を見直す(油っこい物や刺激物を避けるなど)
  • 睡眠・運動・規則正しい生活リズムを整える

<生活面でのサポート>

  • ストレスを減らす工夫(人との距離感、時間の使い方)
  • 必要に応じて薬による不安の緩和
  • 心療内科・精神科医師による相談や生活指導
    (考え方のくせや対応の仕方を一緒に整理していく)

「こころとからだのズレ」を調整していくことで、腸の状態が落ち着いていくことがあります。

■ IBS以外にも「こころが影響する体の不調」があります

IBSと同じように、日常の積み重ねが体に現れる例は他にもあります。

  • 肩こりや頭痛が続く(緊張型頭痛)
  • 動悸や息苦しさ(心因性の過呼吸・不整脈)
  • 胃の不快感、食欲の低下(機能性ディスペプシア)
  • だるさやめまいが取れない(自律神経の乱れ)

これらは「検査では異常がない」と言われがちですが、本人にとっては明確なつらさがあります。
こころでは平気なつもりでも、からだが先に反応してしまうことがあるのです。

■ まとめ

過敏性腸症候群(IBS)は、ただの「お腹の弱さ」ではありません。
「からだが何かを伝えようとしている」そんなサインとして現れることがあります。

無理をして症状を我慢したり、自分を責めるのではなく、
生活の中で何か見直せることがないか見ましょう。
必要があれば専門家に相談しましょう。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

アーカイブ

PAGE TOP