2025年4月14日(月)
40〜50代になってから、「なんだか気分が沈む」「よく眠れない」「ちょっとしたことで涙が出る」――。
そうした不調を「更年期だから仕方がない」と思っていませんか?
実はその症状、うつ病のサインかもしれません。
更年期は、女性ホルモンの急激な変化に加え、家庭や仕事、介護などのライフイベントが重なる時期。
心と体のバランスが崩れやすく、本来はうつ病である症状が“更年期のせい”として見逃されやすいタイミングでもあります。
更年期とうつ病 ― 原因はどう違うのか?
更年期障害
- 主に40〜50代の女性に起こる
- 女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少が主な原因
- 生理的・自然な身体の変化の一部
うつ病
- 年齢・性別を問わず誰にでも起こりうる
- セロトニンなど脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが関与
- 心理的・社会的・遺伝的要因が複合的に関与する
更年期は女性にとって、ホルモンの急激な変化だけでなく、心理的・社会的にも不安定になりやすい時期です。
子どもの自立、親の介護、仕事での責任の変化など、人生の節目が重なり、女性の生涯で最もストレスを受けやすい時期とも言われています。
似ているけれど違う ― 症状の見分け方
共通する症状
- 気分の落ち込み
- 不眠
- 疲労感
- 集中力の低下
- イライラ感
更年期障害に特徴的な症状
- ホットフラッシュ(顔のほてりや発汗)
- 夜間の発汗
- 生理不順
- 膣の乾燥
- 日によって調子に波がある
うつ病に特徴的な症状
- ほとんどのことに興味が持てない
- 強い自責感や無価値感
- 死にたいという気持ちが湧く
- 動きが遅くなる、または落ち着かなくなる
- 症状が2週間以上ほぼ毎日続く
診断と治療 ― どこに相談するか?
更年期障害
- 婦人科や更年期外来で診断
- ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬(当帰芍薬散など)
- 睡眠・運動・栄養バランスの見直し
うつ病
- 精神科・心療内科での診断
- 抗うつ薬や抗不安薬による治療
- 医師による疾患教育、生活指導
更年期とうつ病が重なることも
更年期とうつ病は同時に起こることもあります。
「ホルモンの揺らぎ」と「心の揺らぎ」が重なって、症状がより複雑になることも少なくありません。
このようなときは、婦人科と心療内科の連携が効果的です。
「更年期だから仕方ない」と決めつけず、からだとこころの両面からのアプローチが必要です。
医療機関を受診するタイミング
次のようなサインがある場合は、早めの受診をおすすめします:
- 気分の落ち込みが2週間以上続いている
- 仕事・家事・育児がつらくて手につかない
- 食欲がない、眠れない、朝が特にしんどい
- 自分を責める気持ちが強い
- 死について考えるようになった
まとめ
「年齢のせいだから仕方がない」「誰でも通る道」と思って、つらさを抱え込んでいませんか?
更年期障害も、うつ病も、正しく診断され、治療すれば改善する可能性が高い病気です。
更年期は個人差があるものの、いずれは誰にでも訪れる時期です。
そして60歳頃にはホルモン変動も落ち着き、多くの方がつらい症状から解放されていきます。
更年期は“人生の通過点”。うまく付き合って乗り越えることが大切です。
生活の中で何か見直せることがないか見ましょう。
必要があれば、医療機関に相談しましょう。
からだとこころの声に、優しく耳を傾けてみてください。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏