2025年5月5日(月)
本当にしんどかったのは、あとから気づく ― 精神的に落ち着いたときに見える自分の状態
なぜ「今」は気づけないのか?
うつ病の初期には、「疲れているだけ」「やる気が出ないのは性格の問題」と自分に言い聞かせて、
無理に日常生活を続けてしまう人が多くいます。
特に、責任感の強い人や、周囲に迷惑をかけたくないと考える人ほど、
つらさを自覚せずに頑張り続けてしまうのです。
本当の限界は、静けさの中でわかる
症状が落ち着いて、少しだけ心に余裕が出てきたとき、
ふと「なんであんなに毎日しんどかったんだろう?」と感じることがあります。
うつ病の渦中にあるとき、自分がしんどいことすら自覚できていないことが多くあります。
感覚が麻痺してしまっているため、「とにかく頑張らなきゃ」「まだやれる」と思い込み、
すでに心と体が限界を超えていることに気づけないのです。
朝、布団から起き上がるのがつらかった。
笑っているつもりでも、気持ちは沈んでいた。
好きだったことにも興味が持てなかった。
周りと話すのがおっくうだった。
その時には「何とかしなきゃ」という気持ちだけで過ごしていたかもしれませんが、
あとから振り返ると、あれはうつ病の症状だったのかもしれないと気づくことがあります。
「がんばりすぎた自分」に気づく意味
病状が落ち着いてくると、ようやく「自分は無理をしていた」と認められるようになります。
それは回復のひとつのサインでもあります。
「無理をしていた自分」に気づけたということは、
これからは少しペースを落としながら生きていく準備ができたということです。
では、いま不調を感じている人へ
・眠れない
・気分が落ち込む
・何をしても楽しくない
・人と関わるのがしんどい
こうした状態が続いているなら、今の自分を信じすぎないことも大切です。
「これは自分の弱さではなく、うつ病のために聞きくかもかもしれない」
そう考えるだけで、回復の扉が少し開くことがあります。
まとめ
うつ病は、まじめでがんばり屋の人ほど気づきにくい病気です。
そして、本当に無理をしていたことには、あとになって初めて気づくものです。
自分の「しんどさ」に気がついたとき、初めて、
「これは休んでいい」「回復が必要なんだ」と思えるようになります。
疲れきった心と体には、エネルギーを取り戻す時間が必要です。
焦らず、比べず、ゆっくりと。
回復とは、本当に疲れきっていた自分を受け入れ、いたわることから始まります。
今しんどいと感じているなら、
「もっと頑張る」よりも、「少し立ち止まって、自分を見直す」時間を持ってみてください。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏