ADHDで時間に遅れないようにするには?―“いつもギリギリ”から抜け出すヒント

2025年5月12日(月)

「出かける時間はわかっているのに、気づいたらもう遅れている」
「朝の準備がスムーズにいかない」
「集合時間に合わせて動いているつもりなのに、なぜか遅れる」

ADHD(注意欠如・多動症)の方にとって、「時間に遅れてしまうこと」はいつも気になっていることのひとつです。

でも、ちょっとした工夫や考え方の転換で、“いつもギリギリ”の状態から少しずつ抜け出すことができます。

なぜADHDの方は時間に遅れやすいのか?

ADHDの方が時間管理を苦手とする理由には、いくつかの特徴があります:

  • 今に集中しすぎて、時間の流れを意識しにくい(時間感覚がずれている)
  • 支度の順序や段取りが頭で整理できない
  • 「あと5分」が実際には15分かかるといった見積もりの甘さ
  • 複数のことをやっているうちに、出発時刻を忘れる

これは本人の怠慢ではなく、ADHDの特性に由来するものです。

遅刻を減らすための実践的ヒント

1. 「出発時刻」ではなく「出発準備を始める時刻」を決める

たとえば、「8:30に家を出る」ではなく、「8:15に出発準備を始める」と逆算して行動します。
支度に時間がかかる前提で、スタートラインを早めに設定しておきましょう。


2. アラームは“出発準備を開始する時刻”に設定する

スマートフォンや時計のアラームは、「出発」ではなく「出発準備を始める時間」にセット。
5分ごとに複数鳴らすことで、1回の聞き流しによるミスを防ぎます。

3. 支度を“視覚化”するチェックリストを活用する

たとえば:

  • □ 顔を洗う
  • □ 着替える
  • □ 荷物を確認
  • □ 鍵・財布・スマホをカバンに
  • □ 靴を履く

チェックリストを見ながら支度することで、順序が整理できて抜けが減ります。

4. 出かける直前の「気になる行動」を避ける

ADHDの方は、「出発5分前にSNSを見始める」「荷物の中身を全部広げて確認する」など、
予定外の行動で時間を使ってしまうことがあります。

対策として:

  • 出発30分前からスマホを触らない
  • 荷物チェックは前日のうちに済ませておく
  • 視界に気になる物を置かない

5. 「できなかった日」を責めず、パターンとして見直す

遅刻した日は、原因を冷静に振り返るだけで十分です。
「またダメだった」と自分を責めるより、
「今日は洗濯物でつまずいた」「アラームに気づかなかった」と、具体的に振り返ることで改善に近づきます。

まとめ

時間に遅れることは、ADHDの方にとって珍しいことではありません。
しかし、上記のようなやり方を取り入れることで、遅刻を減らしていくことは十分可能です。

大切なのは、完璧を目指すよりも、自分の特性に合わせて一歩ずつ進むこと。
そして、「できた日」をしっかり認めること。

毎日の積み重ねで、「少しずつ時間に間に合う日が増えてきた」と感じられるようになります。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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