2025年5月26日(月)
「うつは気分が落ち込む状態」「不安は心配や恐怖感が強い状態」――そう聞くと、まったく別のものに思えるかもしれません。
しかし、うつと不安は“兄弟”のような関係にあります。
どちらも精神症状であり、ストレスや生活環境の変化によって発生することが多いという共通点があります。
そして何より、うつ病(気分障害)と不安障害が同時に現れる(併存)こともしばしば見られます。
ただし、症状の現れ方や、それに対する適切な対処法には明確な違いがあります。
うつ(気分障害)の特徴と対処
うつ病(気分障害)の主な特徴は、持続的な憂うつ感、無気力、そしてこれまで楽しめていたことが楽しめなくなる「興味の喪失」です。
エネルギーが低下し、仕事や家事などの日常生活が困難になります。
何をするにもおっくうに感じられ、意欲や集中力が続かなくなるほか、食欲や睡眠パターンにも変化が見られます。
うつ状態は「心のエネルギーが低下している状態」ともいえます。
そのため、決して無理をせず、休息を取りながら治療を進めることが重要です。
焦らず、自分を責めすぎないことが回復への第一歩となります。
心療内科や精神科の専門家と相談し、休養の取り方や、薬物療法・精神療法などの適切な治療を受けることが勧められます。
不安(不安障害)の特徴と対処
不安障害の主な症状は、過剰な不安や恐怖感です。
「また不安になるのでは?」と考える予期不安に悩まされることも特徴です。
この予期不安から、電車に乗る、外に出る、人前で話すといった行動を避けるようになります(回避行動)。
動悸や息苦しさに襲われるパニック発作が起こることもあります。
不安障害では、不安を感じたときに「考え込みすぎず、今やるべきことをやる」、すなわち行動することが大切です。
不安を理由に回避してしまうと、さらに行動範囲が狭まり、不安が強まる悪循環に陥ります。
専門家による治療(薬物療法、精神療法など)を受けつつも、
不安を感じながらも、やらなくてはならないことを日々の中で淡々と実行していくことが、回復への確かな道になります。
うつと不安は“兄弟”だけれど、対処法は違う
うつ(気分障害)と不安(不安障害)は、どちらもストレスを背景に起こりやすく、併存することが多いため“兄弟”のような関係にあります。
ただし、症状の現れ方と対処の方法には以下のような違いがあります:
- うつ(気分障害)
・心のエネルギーが下がっている状態
・無理に動かず、休養を取ること、自分を責めないことが重要 - 不安(不安障害)
・過剰な心配や恐怖が中心
・考えこまず、必要な行動を積み重ねることが大切
終わりに ― 専門家への相談を忘れずに
うつと不安は似ているようで、実は異なる側面を持っています。
症状や対処法にも違いがあるため、「自分がうつなのか、不安障害なのか、どちらかわからない」と感じる方も少なくありません。
そんなときは、メンタルヘルスの専門家に相談することが最も確かな一歩です。
適切な診断と治療を受けることで、ご自身に合った対処法が見えてきます。
そして何より、無理をしすぎないこと、不安を抱え込みすぎないことが、回復の大きな鍵になります。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏