6月2日(月)
アルコール依存症は、単なる意思の弱さからくるものではなく、脳の機能に深く関わる疾患です。継続的な飲酒により脳内の仕組みが変化し、快楽を得るためにアルコールを求めるようになります。
アルコール依存症とは
アルコール依存症は、飲酒を続けることで身体的・精神的にアルコールに依存し、飲酒のコントロールが効かなくなる精神疾患です。
たとえ健康を損ない、経済的に困窮してもやめられず、日常生活が破綻していくことも少なくありません。これは「意思が弱いから」ではなく、脳の働きが変化している結果といえます。
治療は「断酒だけ」で済むものではない
多くの方が「飲まなければいい」と考えがちですが、依存の背景には脳内の化学物質の異常があります。
強い飲酒欲求は意思の力だけでは抑えられず、再飲酒を繰り返す悪循環に陥ってしまうのです。そのため、精神論だけで治すことはできません。
アルコール依存のメカニズム
アルコールは中枢神経に作用し、脳内の報酬系(ドーパミンなど)を刺激します。さらに、行動を抑制する役割を持つ前頭前野の働きにも影響を与え、飲酒をやめるための「ブレーキ」が効かなくなってしまいます。
こうして、飲酒が生活の中心になっていきます。脳の構造自体が変わるため、意思だけでは克服できないのがアルコール依存症の本質です。
薬物療法と診察による自己理解
脳機能の変化に対処する薬物療法に加え、診察を通じた自己理解の促進が大切です。
患者さん一人ひとりと向き合いながら、飲酒の背景や行動パターンを整理し、問題の本質を明らかにしていきます。医師との対話を重ねることで、断酒に向けた現実的な目標設定と行動変容が可能になります。
克服は可能です ― 早めの相談を
アルコール依存症は、適切な治療と支援を受ければ必ず回復できます。
薬物療法で飲酒欲求をコントロール
診察を通して自己と向き合い、問題点を明確にする
家族や周囲と連携し、再発リスクを最小限に
もしご自身やご家族が飲酒に関する問題を抱えている場合は、ためらわず専門医にご相談ください。一人で抱え込まず、一歩を踏み出すことが回復の第一歩になります。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏