2025年6月9日(月)
私たちは誰もが、日々の生活の中で不安や緊張を感じます。
しかし、その不安が強くなり、日常生活に支障をきたすようになると、「不安障害」と診断されることがあります。
不安障害は決して珍しい病気ではなく、適切な治療によって回復が可能なこころの病気です。
不安障害の主な種類
不安障害にはいくつかのタイプがあります。
- 全般性不安障害(GAD)
理由がはっきりしないまま、漠然とした不安が長期間続く状態です。
「なんとなく気分が晴れない」「いつも何かを心配している」といった感覚が特徴です。 - パニック障害
突然の強い不安発作(パニック発作)に襲われる病気です。
一度発作を経験すると、「また起きたらどうしよう」という予期不安が強くなり、外出や移動が困難になることもあります。 - 社交不安障害(社交恐怖)
人前で話すことや注目される場面に強い不安を感じます。
会議や発表、初対面の人との会話などで極端に緊張し、そうした状況を避けるようになることもあります。 - 強迫症(強迫性障害)
「必要ない」と頭では分かっていても、何度も確認したり、手を洗い続けたりするなど、
強迫的な思考や行動が止められなくなる状態です。
不安障害がもたらす影響
不安障害は単なる“気分の問題”ではなく、生活や仕事に大きな影響を及ぼします。
例えば、次のような状況が考えられます。
- 判断や行動が消極的になり、チャンスを逃してしまう
- 同僚や家族のささいな言動に過敏になり、人間関係がぎくしゃくする
- 自信をなくし、日常のすべてが「こなすだけ」になってしまう
しかし、不安が和らいでくると、心にも余裕が戻り、本来の力を取り戻すことができるようになります。
不安を乗り越えることは、気分の安定だけでなく、人との関わり方や仕事の成果にも大きく影響するのです。
治療と向き合い方
以前はベンゾジアゼピン系の抗不安薬が治療の中心でしたが、現在は依存のリスクを考慮し、
必要最小限にとどめることが基本とされています。
それ以上に重要なのは、以下のような考え方と姿勢です:
- 不安は「実態のある問題」ではなく、「頭の中で膨らんだ予測」にすぎないことを知る
- 不安を消そうとせず、“必要以上に考えない”習慣を身につける
- 不安があっても、「やらなければならないこと」を少しずつでもこなしていく
✔ 実践のヒント(ごく簡単な例)
- 朝、不安があってもゴミ出しや洗顔だけはやってみる
- 会社に行くのがつらい日でも、まずは駅まで行ってみる
- 食事の準備が難しければ、おにぎり1個と味噌汁だけでも用意してみる
不安をゼロにすることではなく、「不安があっても行動できた」という経験を積み重ねることが、回復への第一歩になります。
早めの相談をためらわないでください
「これくらいの不安は誰にでもあるから」と、ひとりで抱え込んでいませんか?
不安障害は、特別な人がかかるものではなく、多くの人が経験し、そして乗り越えていく病気です。
もし少しでも気になることがあれば、メンタルヘルスの専門家に相談してみましょう。
早めに適切なサポートを受けることで、回復はよりスムーズになります。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏