2025年6月23日(月)
突然の息苦しさや「このまま死んでしまうのでは」という強い恐怖を感じた経験はありませんか?
それは「パニック発作」と呼ばれるもので、パニック障害の可能性があります。
パニック障害は、突発的な不安発作(パニック発作)が繰り返し起こる病気です。
多くの場合、心臓や呼吸に異常があるように感じても、身体的な異常はなく、
自律神経が一時的に過敏になったことに原因があります。
パニック障害の主な症状
パニック発作は前触れなく突然現れ、その後ピークに達しますが、短時間でおさまります。
主な症状には次のようなものがあります。
- 激しい動悸・脈の速まり
- 息苦しさ・呼吸がしづらい
- めまい・ふらつき
- 胸の痛みや圧迫感
- 手足のしびれ・震え
- このまま死ぬのではないかという強い恐怖感
このような症状は短時間であっても、とても苦痛に感じられ、「今まさに命の危険がある」と思えるほどですが、
実際には体が過剰に反応しているだけで、本当に危険が迫っているわけではありません。
不安とは、多くの場合「これから起こるかもしれないこと」にとらわれ、頭の中で大きく膨らんでしまった結果であり、
現実に起きている危険ではありません。
予期不安と回避行動
発作が繰り返されると、「また起こったらどうしよう」という不安(予期不安)が生じ、
電車やエレベーター、会議室、人混みなど、「発作が起きたら困る場所」を避けるようになります。
このような回避行動が生活範囲を狭め、社会生活に支障をきたすようになるのが、パニック障害の問題点です。
予期不安に対しては、不安を完全になくそうとするよりも、不安は実態のないものであることを理解し、
「不安があってもやるべきことはやる」という姿勢が、不安を減らしていきます。
不安を受け入れながらも、必要な行動を継続することが、回復につながります。
診断と治療について
パニック障害は、適切な治療によって改善が見込める病気です。以下のような対応が基本になります。
- 薬物療法
SSRIなどの抗うつ薬でパニック発作を予防し、パニック発作が差し迫ったときには、必要に応じて抗不安薬を使用します。
治療初期には「薬に頼っても大丈夫なのか」と不安に感じる方もいますが、
過敏になった自律神経をいったん落ち着かせることは、再発予防につながります。
再発を繰り返すと不安が治りにくくなるため、治療上、再発予防はとても大切です。 - 自律神経を安定させるため
睡眠、生活リズムを整えていきます。 - 予期不安による回避行動への対処
予期不安による回避行動がある場合は、不安は実態のないものであることを理解し、
必要なことはやっていくことで日常生活を取り戻していきます。
自分の症状を理解し、過剰に反応している身体を整えていくことが重要です。
最後に ― 恐怖の正体を知ることで、回復への道が開けます
パニック障害は、強い恐怖と不安を伴う症状ですが、
決して治療が難しい病気ではなく、十分に治療可能です。
「同じことがまた起きたらどうしよう」と不安を抱えながら生活せずに、
症状の背景を理解することで、日常を少しずつ取り戻していくことができます。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏