「考えすぎてしまう自分」に悩んでいませんか? ― 反芻思考と不安障害

2025年6月30日(月)

「同じことを何度も考えてしまう」
「過去のことで、もう終わったことなのに頭から離れない」
「寝る前に、嫌なことばかり思い出してしまう」
「まだ起こっていない出来事を想像して、ひどく不安になる」

このような“考えすぎ”の状態に心当たりはありませんか?
それは「反芻思考(はんすうしこう)」と呼ばれる状態で、過度な不安の表れかもしれません。

反芻思考とは何か?

反芻思考とは、過去のネガティブな出来事や将来の不安について、何度も頭の中で繰り返し考えてしまうことです。

とくに不安障害の方では、以下のような傾向が見られます。

  • 小さな失敗を何度も思い出し、後悔する
  • まだ起こっていない出来事を想像して、ひどく不安になる
  • 心配しても解決しないと分かっていても、考えるのをやめられない

こうした思考の癖は、心のエネルギーを大きく消耗させ、眠れなくなる、集中力が落ちるなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。

なぜ反芻思考が起きるのか?

反芻思考は、「何でも気になる」「不安になりやすい」といった神経質性格と深い関係があります。
これは、こころの防衛的反応として起きています。

不安を感じやすい人は、失敗や危険に備えるために「頭の中で予行演習」をしているような状態になり、思考を止めにくくなるのです。
このような「とらわれ」が強まると、考えが堂々巡りになり、ますます抜け出せなくなります。

とらわれから抜け出すためにできること

考えすぎから解放されるためには、「不安をなくそうとする」のではなく、
不安や思考をそのまま受け入れながら、やるべき行動を淡々と続けることが大切です。

たとえば、次のような行動を試してみましょう。

  • 不安があっても、朝起きて顔を洗い、食事をとる
  • 嫌な思考が浮かんでも、必要な仕事や家事を進める
  • 考えすぎていることに気づいても、ありのままに受け入れ、無理に打ち消そうとしない

「とらわれ」から解放されようと力むほど、かえって抜け出せなくなってしまいます。
自分の思考や感情はそのまま自然に受け入れ、現実の行動を淡々と続けることで、心は少しずつとらわれから解放されていきます。

治療と向き合い方

反芻思考に悩む方に共通しているのは、「考えすぎていること自体はわかっているのに、止められない」という感覚です。
この場合、以下のような対処が効果的です。

  • 「不安は実体のないものかもしれない」と気づく視点を持つ
  • 不安なままでも、必要な行動に集中する(行動重視)
  • スマホやSNSなど、思考を刺激するものから距離を取る
  • 睡眠・生活リズムを整え、自律神経の安定を図る

また、薬物療法も有効です。
抗うつ薬や抗不安薬によって、不安になりやすい気持ちを落ち着かせることで、思考の暴走が軽減され、行動重視の生活がしやすくなります。

最後に ― 「考えすぎ」は、こころのサインかもしれません

「どうしてこんなに考えてしまうんだろう」と、自分を責めていませんか?
でもそれは、不安から自分を守ろうとする心のメカニズムが、少し過剰に働いてしまっている状態かもしれません。

反芻思考は、繰り返せば繰り返すほどやめられなくなり、悪化しやすい傾向があります。
反芻思考が続き、日常生活に支障をきたす場合は、
一度専門家に相談してみることをおすすめします。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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