もしかして、うつだけじゃない? ― ADHDとうつ病の関係について
2025年7月28日(月)
「仕事がなかなか手につかない…」
「集中できないし、物忘れもひどい…そんな自分が情けない」
「気分も沈みがちで、やる気も出ない」
もし、そんな状態が長く続いているなら、うつ病の治療を受けていてもなかなか改善しない背景に、ADHD(注意欠陥・多動症)が隠れている可能性があります。
ADHDとうつ病は、なぜ併発しやすいのか
ADHD(注意欠陥・多動症)は、不注意、衝動性、落ち着きのなさといった特性を持つ発達障害のひとつです。
子どもだけのものと思われがちですが、大人になってから症状に悩む方も多く、気づかないまま社会人になり、生きづらさや失敗を重ねてしまうことがあります。
このような「できない」経験が続くと、「自分はダメな人間だ」「また失敗してしまった」と自己否定が積み重なり、それがきっかけでうつ病を発病することがあります。
実は見過ごされやすい「ADHDとうつ病の併存」
ADHDの存在に気づかれないまま、うつ病だけが診断されるケースは少なくありません。
しかし、ADHDとうつ病が併存している場合、うつ病の治療だけではなかなか改善しにくいことがあります。
たとえば、次のようなことはないでしょうか。
- 抗うつ薬が効いているのに、仕事が進まない
- やる気はあるのに、集中できず達成感がない
- 気分が改善しても、生活の乱れが続いている
このような場合は、その背景にADHDがある可能性を考えてみることが必要です。
ADHDの特性が、うつ状態を悪化させることも
ADHDに特有の症状(先延ばし、忘れっぽい、計画を立てるのが苦手など)は、うつ病が回復しても「怠けている」と誤解されたり、自分を責める原因になります。
その結果、
- やる気はあるのに、なかなか行動に移せない
- 簡単なことでさえ、手が出ない
- 周囲とのズレを感じ、ますます自己評価が下がってしまう
といった悪循環に陥りやすくなります。
治療や支援の方向性
ADHDとうつ病の併存が疑われる場合は、次のような点が大切です。
- 自分を責める前に、「もしかするとADHDかもしれない」と考えてみる
- 必要に応じてADHDの評価を受け、特性に合った支援や治療法を検討する
- ADHDに気づいたら、仕事の進め方や人間関係の工夫など、環境の調整を行う
- 自分を否定するのではなく、やり方や環境を調整するという意識が、回復の第一歩になります
「やる気が出ない」の正体は、気分だけの問題ではないかもしれません
うつ病と診断されていても、なかなか治らない、やる気はあるのに空回りする。
そんなときは、その背後にADHDの特性が隠れている可能性があります。
やれない自分を責めるのではなく、なぜうまくいかないのかを見直してみることで、解決への新たなヒントが見えてくるかもしれません。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏