検査で異常なし。でもつらい ― 身体症状症(身体表現性障害)とは?

検査で異常なし。でもつらい ― 身体症状症(身体表現性障害)とは?

2025年8月11日(月)

胸の痛みや息苦しさ、めまい、吐き気、腹痛…。こうした症状が続いて病院で検査を受けても「異常はありません」と言われたことはありませんか?それでも症状はなくならず、生活や仕事に支障が出てしまうことがあります。このような場合、身体症状症(身体表現性障害)の可能性があります。

身体症状症は国際基準での名称で、以前は身体表現性障害と呼ばれていました。意味する内容はほぼ同じですが、身体症状症では症状そのものに加え、それによる不安や生活への影響も診断の条件に含まれます。

この病気で最も多い原因は、仕事や家庭、人間関係などによる長期的な心理的ストレスです。軽い負担でも長く続くと、自律神経やホルモンの働きが乱れ、体が敏感になり症状が出やすくなります。

まじめで几帳面、責任感が強い、不安を感じやすいといった性格傾向や、過去の病気やけがの経験、睡眠不足や生活リズムの乱れも影響します。自分では「ストレスはない」と思っていても、長年の我慢や無理が当たり前になり、抑え込まれた負担が体に現れることもあります。

症状が続くことで不安や緊張が高まり、さらに症状が悪化する悪循環に陥ることがあります。「原因が分からない不安」が心身の負担になる場合もあります。自分の感情や体のサインに耳を傾け、「無理をしていないか」「我慢しすぎていないか」を振り返ることが改善の第一歩です。

治療では、症状とストレスの関係を理解し、ストレスへの対処法を身につけることが大切です。必要に応じて薬を併用しながら、睡眠・食事・運動など生活のリズムを整えていきます。

身体症状症(身体表現性障害)は「気のせい」ではありません。検査で異常がなくてもつらさが続くときは、ためらわずに心療内科や精神科などの医療機関にご相談ください。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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