強迫性障害(強迫神経症)とは ― とらわれの悪循環
2025年8月18日(月)
戸締まりを何度も確認してしまう。手洗いが止まらない。頭の中で同じ考えがぐるぐる離れない。理屈では「やりすぎだ」と分かっていても、不安が強くてやめられないのです。こうした状態が続いて生活や仕事に支障が出る場合、強迫性障害(強迫神経症)の可能性があります。症状の本質は「不安をなくそうとするとかえって不安を強める」という、とらわれの悪循環にあります。
原因と背景
強迫性障害では、不安や危険に備える脳の回路が過敏に働きます。しかし問題は、不安そのものではなく「不安を排除しようとする心性」にあります。人は誰でも不安や疑念を抱きますが、それを嫌って排除しようとすると、かえってその思いで心がいっぱいになり、不安や確認行為が強まってしまいます。
真面目で几帳面、責任感が強く、不安を感じやすい性格(神経質性格)が関係します。神経質性格は長所でもありますが、とらわれを生みやすい原因にもなります。その結果「不安 → 確認 → 一時的な安心 → 再び不安」という悪循環が繰り返され、確認行為が止まらなくなります。
悪循環に気づく
不快な考えや想像によって不安が高まり、その不安を減らすために確認行為(たとえば手洗い)をすると一時的に安心します。しかし「確認行為をしなければ不安は消えない」という思い込みを強め、確認行為がやめられなくなっていきます。大切なのは「不安があっても、不安をありのままに受け止め生活を続ける」という姿勢です。不安を排除しようとするほど、とらわれが深まります。
治療と受診のメリット
治療では、不安や症状を無理に排除しようとせず、症状があっても生活を続ける「とらわれすぎない姿勢」を持つことが大切です。また、SSRIと呼ばれる抗うつ薬が有効な手段として使われます。心の持ち方を変えることと薬物療法の両面から取り組むことで、改善が期待できます。
早めに受診すれば、悪循環を繰り返す前に対応でき、回復までの道のりを短くできます。強迫性障害は適切な理解と治療があれば必ず改善します。
おわりに
強迫性障害では「分かっているのにやめられない」つらさがあります。その背景には「不安を排除しようとする心性」と「とらわれ」があります。確認行為を繰り返すほど抜け出せなくなりますが、物事にとらわれすぎない姿勢を持つことと、SSRIによる薬物療法を組み合わせることで改善が見込めます。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏