生活リズムの乱れは危険信号?― 双極性障害と向き合う生活のヒント

生活リズムの乱れは危険信号?― 双極性障害と向き合う生活のヒント

2025年8月25日(月)

双極性障害は、気分が大きく変動し、うつ状態と躁状態を繰り返します。調子が良く元気なときは「もう治ったのでは」と思いがちですが、実はその時こそ注意が必要です。生活リズムの乱れは、次の気分の波を引き起こす原因になっていることがあります。双極性障害の症状は、生活のリズムと深く関わっているのです。


気分の波と体内時計

双極性障害の患者さんにとって、睡眠不足や夜更かし、昼夜逆転といった生活リズムの乱れは、躁状態やうつ状態を引き起こす大きな原因となります。私たちの脳には「概日リズム」と呼ばれる体内時計があり、睡眠や覚醒、ホルモンの分泌をコントロールしています。生活リズムの乱れによりこのリズムが崩れると、気分を調整する機能が不安定になり、症状が出やすくなります。

特に、日照時間の変化や環境の変化が重なる春や秋は、気分の変動が大きくなりやすいことが知られています。


調子が良いときこそ、休養を

双極性障害では、気分が高まりエネルギーが増すときは、病気が改善したというよりも、躁状態の始まりである可能性があります。この時期は短時間の睡眠でも元気に活動できるため、仕事や趣味に没頭したり、人付き合いが活発になったりします。しかし、無理をし続けると症状がどんどん悪化し、その後は強い反動でうつ状態に陥ってしまいます。

「元気だから大丈夫」と思わず、むしろ調子が良すぎるときほど意識的に休むことが大切です。


安定した生活習慣と再発予防

双極性障害の再発予防には、薬による治療と同じくらい規則正しい生活習慣が重要です。まず、毎日決まった時間に就寝・起床するよう心がけましょう。徹夜や過労は大きなリスクとなります。また、バランスの取れた食事、適度な運動を取り入れることも、症状を安定させることに役立ちます。

ご本人だけでなく、ご家族や職場の人が「生活リズムの乱れ」が病気のサインになり得ることを知っておくことも、早期の対応につながります。


おわりに

双極性障害は、気分の波だけでなく、生活のリズムの乱れも病状に深く関係しています。気分安定薬による治療に加え、日常生活を一定にすることが、再発を防ぎ、安定した生活を送るために重要です。調子が良いときも、無理をせず安定した生活リズムを保つことが、病気と向き合うための大切な一歩です。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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