突然の動悸や息苦しさ…それはパニック障害かもしれません

突然の動悸や息苦しさ…それはパニック障害かもしれません

2025年9月1日(月)

ある日突然、強い動悸や息苦しさに襲われ、「このまま死んでしまうのでは」と感じたことはありませんか? 救急外来を受診しても検査では異常が見つからず、不安だけが残る…。こうした症状の背景には、パニック障害が隠れていることがあります。


パニック発作とは

パニック障害の中心的な症状は「パニック発作」です。発作は前触れもなく起こり、動悸や息切れ、胸の圧迫感、冷汗、震え、めまいなどが一気に襲いかかります。「死んでしまうのでは」「気が狂うのでは」と強い恐怖を感じますが、発作は数分から長くても30分ほどで自然に治まります。しかし、体験した後は強烈な恐怖感が残ってしまいます。


身体症状と自律神経の関係

こうした身体症状の多くは、自律神経のアンバランスによって起こります。危険を感じると交感神経が優位になり、心拍数や呼吸数が上がり、筋肉は緊張します。これは本来、危険から身を守るための正常なストレス反応です。しかしパニック障害では、実際に危険がない状況でもこの反応が出てしまいやすいのです。発作は「心臓や肺の病気」ではなく「自律神経の過剰反応」で起こるのです。


予期不安と悪循環

一度発作を経験すると、その恐怖が心に残り、「また発作が起こるのでは」と常に身構えるようになります。これを予期不安と呼びます。発作がなくても不安が続き、外出や電車に乗ることを避けるようになり、生活の範囲がどんどん狭まってしまうのです。

この悪循環を断ち切るためには、できるだけ発作を予防することが大切です。発作そのものが強い恐怖を心に残し、予期不安を固定化させてしまうからです。


治療と回復への道

パニック障害は、適切な治療を受けることで必ず良くなります。薬物療法ではSSRIと呼ばれる抗うつ薬が有効で、自律神経の過敏さを落ち着かせます。処方された薬は自己判断で中断せず、医師の指示に従って継続することが大切です。

生活面では、睡眠不足や過労を避け、カフェインやアルコールを控えることが予防につながります。発作が起きても「命に関わるものではない」と冷静に理解し、深呼吸を意識することも回復につながります。


おわりに

パニック障害は突然の発作から始まり、予期不安によって生活が制限されていきます。しかし、正しい理解と治療によって、必ず改善します。発作は命に関わるものではなく、治療を続ければ必ず良くなります。

どうか一人で抱え込まず、早めに専門の医療機関を受診し、安心して生活を取り戻す第一歩を踏み出してください。

高橋心療クリニック
院長 高橋 道宏

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