眠れない夜が続くとき ― うつ病と不眠症の関係
2025年9月8日(月)
「なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」「早朝に目が覚めてしまう」――こうした不眠の悩みは誰にでも起こり得ますが、長引く場合はうつ病と深く関わっていることがあります。うつ病と不眠症は互いに影響し合うため、注意が必要です。
不眠はうつ病のサイン
うつ病の症状は気分の落ち込みや意欲の低下だけではありません。多くの方に見られるのが睡眠の乱れです。入眠障害(なかなか眠れない)、中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)、早朝覚醒(予定よりずっと早く目が覚める)のいずれも、うつ病の初期に表れることが少なくありません。
眠れない夜が続くことで「また眠れなかったらどうしよう」という不安が募り、心と体の疲労がさらに強くなります。これがうつ病の悪化を加速させてしまうのです。
不眠がうつ病を悪化させる
睡眠は脳と心を休める大切な時間です。不眠が続くと、自律神経やホルモンのバランスが崩れ、感情を安定させる働きが弱まります。その結果、抑うつ症状が強まったり、気分の変動が大きくなったりします。
つまり、不眠はうつ病の症状であると同時に、病気を悪化させる要因にもなるのです。この悪循環を断ち切るためには、睡眠の改善が欠かせません。
改善のためのポイント
うつ病に伴う不眠には、薬物療法と生活習慣の調整の両方が有効です。抗うつ薬の中には睡眠を改善する作用を持つものがあり、必要に応じて睡眠薬を併用することもあります。ただし、薬はあくまで医師の指示に従って正しく使うことが大切です。
生活習慣では、就寝・起床時間を一定に保つ、就寝前のスマートフォンやカフェインを控える、日中に適度な運動や日光を浴びる――といった工夫が役立ちます。睡眠環境を整えることは、薬と同じくらい重要です。
おわりに
うつ病と不眠症は切り離せない関係にあります。眠れない状態が続くとき、それは単なる生活リズムの乱れではなく、こころの不調のサインかもしれません。
不眠を軽く見ず、早めに相談することが、うつ病の予防と回復の第一歩になります。うつ病は適切な理解と治療を受けることで、必ず改善します。眠れない夜に悩んでいる方は、どうか一人で抱え込まず、専門の医療機関にご相談ください。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏