ストレスや環境の変化に心が追いつかない ― 適応障害とは
2025年9月15日(月)
「職場の人間関係がうまくいかない」「受験のプレッシャーが辛い」「引っ越しで環境がガラッと変わった」など、私たちの生活にはさまざまなストレスや環境の変化があります。ストレスに心がうまく対応できず、体や心に不調が現れることがあります。これが適応障害です。
適応障害とは
適応障害は、はっきりとしたストレスがきっかけとなり、気分の落ち込み、不安、焦り、イライラといった心の症状に加え、頭痛、胃の不快感、食欲不振、睡眠障害などの体の不調が現れる病気です。
原因がはっきりしているのが大きな特徴で、例えば職場の人間関係や受験、引っ越し、家庭内のトラブルなどが引き金になります。
ストレスなどの原因が解決すれば、症状は落ち着くことが多いですが、無理をし続けるとうつ病になってしまうこともあります。適応障害はうつ病への入口と考えられます。だからこそ、「心のSOS」を見逃さないことが大切です。
どんな症状が出るのか
- 気分が落ち込む、涙もろくなる
- 不安や焦りで落ち着かない
- 怒りっぽくなったり、些細なことでイライラする
- 集中力の低下、仕事や勉強の能率が落ちる
- 不眠、食欲不振、頭痛、胃の不快感
症状の程度によっては、遅刻、欠勤、不登校、対人関係の回避など、生活に支障をきたします。
適応障害になりやすいパーソナリティ
適応障害は「心が弱いから」なる病気ではありませんが、適応障害になりやすい性格があります。真面目で几帳面、責任感が強い、人間関係に気をつかう―こうした性格は本来、長所です。
しかし、強いストレスにさらされると、その性格が裏目に出て、心身の負担を増やしてしまうのです。
うつ病との違い
うつ病は、特に原因がなくても発症することがあり、治療に時間がかかることが多いです。適応障害を放置すると、うつ病へ移行する可能性もあります。「ちょっとした不調だから…」と軽視せず、早めに医療機関に相談することが大切です。
治療と支援
適応障害を乗り越えるには、まず「何がストレスになっているのか」を整理し、こころの医療の専門家と一緒に解決策を探していくことが大切です。
症状が強い場合は、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などを用いて、気分の落ち込み、不安や不眠を和らげます。ただし、薬はあくまで補助的な役割で、「ストレスとどう付き合うか」を見直し、生活のバランスを取り戻すことが大切です。
おわりに
適応障害は、誰にでも起こり得る身近なこころの病気です。放置すると症状が長引き、うつ病に移行することがあります。適応障害はうつ病への入口なのです。
ですから、早期にこころの医療の専門家に相談し、必要な治療やサポートを受けることが大切です。無理をせず、安心できる環境で支援を受けながら、少しずつ回復への一歩を踏み出していきましょう。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏