体の病気と心の関係 ― 心身症とは

体の病気と心の関係 ― 心身症とは

2025年9月29日(月)

「胃が痛くて検査を受けたが異常はないと言われた」「頭痛や肩こりが続いているのに原因がわからない」――。こうした経験はありませんか? 実はその症状、心身症かもしれません。


心身症とは

心身症では、心のストレスや不安が体に影響して、痛みや不調といった身体症状として現れます。

代表例には、胃潰瘍や過敏性腸症候群、気管支ぜんそく、片頭痛、アトピー性皮膚炎などがあります。これらは「体の病気」ですが、背景にストレスが関与していることが少なくありません。


どんな症状が出るのか

  • 胃痛、下痢、便秘などの消化器症状
  • 動悸や息苦しさ
  • 肩こり、頭痛、めまい
  • 皮膚のかゆみや湿疹

検査で大きな異常が見つからないのに症状が続く、あるいは体の病気の症状が強く出やすい、という点が特徴です。


なぜ起こるのか

心身症の背景にはストレスがあります。

  • 仕事や家庭での人間関係
  • 将来に対する不安
  • 完璧主義や真面目すぎる性格傾向

これらが自律神経のバランスを乱し、胃腸や呼吸器、循環器などに影響します。「ストレスを感じていない」と思っていても、体が先に悲鳴を上げることがあります。心は抑圧できても、体は正直なのです。


改善のために

  • 薬物療法:不安や不眠が強ければ、抗うつ薬や抗不安薬を併用します。
  • 不安との付き合い方:症状を「なくそう」と力むより、「症状をありのまま」に受け止め、焦らず、症状があってもいつも通りの生活を続けることが大切です。
  • 生活習慣の見直し:十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事が心身を安定させます。

気のせいではなく本当の病気

検査で異常が見つからないため、心身症は「気のせい」と誤解されることがあります。しかし、それは間違いです。心身症は実際に体に症状が出ており、自分ではコントロールできません。

例えば過敏性腸症候群では、通勤電車で腹痛に襲われたり、会議中に何度もトイレに行きたくなったりと、日常生活に深刻な支障が出ます。ストレスが引き金になり、実際に腹痛や便通異常が起こっているのです。心身症は「本当の病気」であり、軽視してはいけません。


ストレスに気づくためのヒント

  • 趣味に興味が持てなくなった
  • わけもなくイライラや落ち込みが続く
  • 食欲がなくなる、あるいは食べすぎる
  • 夜中に目が覚める、寝つきが悪い
  • 家族や友人との会話が減った

こうした心のサインと、胃痛や頭痛など体の症状が同時に現れている場合は、心身症の可能性を考える必要があります。


おわりに

心身症は「体の病気」であり「心の病気」でもあります。検査で異常が見つからないときこそ、「気のせい」にせず、心に原因はないかと考えることが大切です。

心と体はつながっています。心身症は適切な理解と治療を受ければ必ず改善します。体の不調が長引くときは、一人で悩まず、専門の医療機関にご相談ください。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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