食べすぎてしまう ― 「過食」の背景にあるこころのメカニズム

食べすぎてしまう ― 「過食」の背景にあるこころのメカニズム

2025年10月28日(月)

「ストレスを感じるとつい甘いものを口にしてしまう」「お腹が空いていないのに何か食べてしまう」――。そんな経験はありませんか?
食べすぎは単に意志の弱さだけでなく、体の仕組みと心の反応の両方が関係しています。

過食とは

過食とは、必要以上に食べてしまうことです。特に甘いものを食べすぎてしまうと、糖分によって一時的に脳内の快楽物質(ドーパミン)が分泌され、「安心感」や「満たされた感覚」を得ることができます。

しかし、甘みには依存性があり、その効果は長く続きません。やがてまた欲しくなり、食べすぎを繰り返してしまいます。食べることで一時的に安心できても、食後に「またやってしまった」と罪悪感が生まれ、さらにストレスが強まるという悪循環に陥ります。

過食が起こる理由 ― 生理的な要因

  • 血糖値の急変動: 甘いものを食べると血糖値が急上昇し、その後急激に下がります。血糖値が下がると脳が「もっと食べたい」と感じ、食欲が刺激されます。
  • ホルモンのバランス: 空腹を感じさせる「グレリン」と満腹を知らせる「レプチン」のバランスが崩れると、満腹でも食べたいという信号が出てしまいます。睡眠不足や疲労もこのバランスを乱します。
  • ドーパミンの影響: 甘いものを食べると快楽物質ドーパミンが分泌されます。習慣化すると同じ量では満足できず、過食が強化されます。

このように、過食は生理的な衝動として起こるため、意志だけで止めるのは難しいことが理解できます。

心理的な要因 ― 感情を満たすための行動

  • ストレスや不安の解消: 食べている間だけは嫌な気持ちを忘れられ、食べることが“心の逃げ場”になる。
  • 孤独や寂しさの埋め合わせ: 話したいのに話せないとき、食べることで安心感を得ようとする。
  • 感情の抑圧: 怒りや悲しみなど、抑え込んだ感情が「過食」という形で表に出る。

心の反応と体の仕組みが重なることで、過食はより習慣化していきます。

どう向き合えばいいか

  • 感情に気づく: 「食べたい」と感じるとき、そこに不安や寂しさが隠れていないかを振り返ってみましょう。
  • 生活リズムを整える: 睡眠不足はホルモンバランスを崩し、過食を助長します。まずは休息を優先。
  • リラックスの方法を増やす: 深呼吸、温かい飲み物、軽い運動など、食べる以外に心を落ち着ける方法を用意しておきましょう。

焦らず、自分を責めず、「また食べすぎてしまった」と感じたときも、まずは「これまで頑張っていたんだ」と受け止めることが回復への第一歩です。

おわりに

過食は、心と体の両方が疲れたときに起きてきます。食べすぎた自分を責めるのではなく、「なぜそうなったのか」に目を向けましょう。少しずつ心と体のリズムを整えていけば、過食は自然と落ち着いていきます。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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