終わらない「心配の連鎖」を断ち切る:全般性不安障害(GAD)と向き合う

終わらない「心配の連鎖」を断ち切る:全般性不安障害(GAD)と向き合う

2025年10月27日(月)

「いつも何かを心配している」「理由はわからないけれど落ち着かない」。心配事が絶えず頭の中を巡り、心も体も休まらない状態が続いている。
そんな状態が半年以上続いている場合、全般性不安障害(GAD:Generalized Anxiety Disorder)の可能性があります。

1. 「気にしすぎ」では片づけられない不安

全般性不安障害では、日常のささいな出来事がきっかけとなって不安が生じ、その不安にとらわれ続けるようになります。
「仕事で少し注意された」「家族の体調が悪そうだった」といった小さなことでも、不安が膨らみ、「あのときの言い方はまずかったのでは」「何か悪いことが起きるのでは」と考え続けてしまいます。
「心配しすぎだ」と分かっていても、不安の連鎖から抜け出せず、気づくと一日中不安な気持ちに引きずられています。
集中できない、疲れやすい、肩こりや頭痛が続く、眠れないといった身体の不調を伴うことも少なくありません。

2. 神経質性格との関係

几帳面で責任感が強く、物事を深く考えやすい「神経質性格」の人は、不安を抱えやすい傾向があります。
まじめで慎重な長所が裏目に出て、完璧を求めすぎたり、失敗への恐れが強くなるのです。
神経質性格にストレス、疲労が重なると、全般性不安障害になりやすくなります。

3. 不安と身体の関係

不安が続くと自律神経が過剰に働き、動悸や息苦しさ、胃の不調などが起こります。
脳内では、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスが乱れ、心と体の両方が疲弊していきます。
これは『気の持ちよう』ではなく、心と体の調整が必要な状態と考えることが大切です。

4. 治療と回復のためにできること

全般性不安障害は、適切な治療と生活の工夫によって乗り越えることができます。

薬物療法

薬物療法では、脳内の神経伝達物質のバランスを整えるために抗うつ薬を使用します。
抗うつ薬は不安を和らげる効果があり、依存性がないため、継続的に服用することで安定した効果が得られます。
一方、抗不安薬には依存性があるため、必要なときに短期間だけ使用することが望ましいとされています。

心の整え方

不安を消そうとするのではなく、不安を抱えながらも行動できるようにすることが大切です。
不安を受け入れ、不安を抱えながらも行動しているうちに、自然に不安がなくなっていきます。
また、不安になりやすい考え方のくせを見つめ直し、柔軟な受け止め方を身につけていくことも役立ちます。

生活の整え方

十分な睡眠と休息をとり、規則正しい生活を心がけましょう。
コーヒーや紅茶などのカフェイン飲料、アルコール、エナジードリンクなどの刺激物は、神経を興奮させて心拍数を上げたり、眠りを浅くしたりする作用があります。これらは不安や動悸を強め、翌日の疲れやすさにもつながるため、控えめにすることが大切です。
深呼吸や軽いストレッチで体の緊張をゆるめ、心と体のバランスを整えましょう。

5. おわりに

全般性不安障害は、治療可能な病気です。
今は強い不安に苛まれていても、必ず良くなります。
焦らず、自分のペースで心と体のバランスを整えていきましょう。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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