うつ病に及ぼす季節の影響 ― 秋から冬にかけて気分が沈むときに考えたいこと
2025年11月3日(月)
秋が深まり、日が短くなると「なんとなく気分が沈む」「眠っても疲れが取れない」「食欲が変わる」と感じる方が少なくありません。
この時期になると気分の波を感じたり、生活リズムが乱れやすくなる方もおられます。
こうした変化は、季節の影響によって体のリズムが変化しているからかもしれません。
うつ病と季節の関係を理解すると、症状を乗り越えやすくなります。
1. うつ病と季節の関係
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下が続く病気で、心身のエネルギーが低下した状態です。
発症のきっかけは人それぞれですが、季節の変化もその一因となることがあります。
秋から冬にかけて日照時間が減り、体内時計のリズムが乱れると、気分の安定に関わる神経伝達物質の働きが低下しやすくなります。
その結果、「眠気が強くなる」「食欲が増える」「だるさが取れない」といった変化が現れます。
2. 季節性うつ病とは
こうした季節による変動が明確に繰り返される場合、「季節性うつ病(季節性感情障害)」と診断されます。
日照時間が短い秋から冬にかけて症状が出やすく、春や夏になると自然に回復するのが特徴です。
うつ病の中で季節性うつ病と診断されるのは、およそ1〜2割程度と報告されています(Rosenthal NE et al., Arch Gen Psychiatry, 1984)。
明確な季節性うつ病の診断基準を満たさなくても、季節の影響を受けて気分や睡眠、食欲に変動を感じる方は多くおられます。
うつ病は、季節の影響が現れやすい病気なのです。
3. 季節による症状の特徴
秋から冬にかけては、「過眠」「過食(特に甘いもの)」「体重増加」「活動性の低下」がみられることがあります。
これらは一般のうつ病でもよくみられますが、季節の変化が加わるとより症状が強く出やすくなります。
また、症状の現れ方は個人差があり、環境や体質、季節のリズムが複雑に関係しています。
4. 季節の影響を和らげるために
- 朝の光を浴びる:起床後はできるだけ早くカーテンを開けて日光を取り入れましょう。朝の光が体内時計を整え、気分を安定させます。
- 軽い運動を続ける:ウォーキングやストレッチは血流を促し、気分の安定や睡眠リズムの改善に役立ちます。
- 食生活を整える:バランスのとれた食事を心がけ、過度な食事制限や不規則な食習慣を避けましょう。
- 生活リズムを安定させる:休日も同じ時間に起き、夜更かしを避けて体内リズムを保つことが大切です。
症状が続く場合や生活に支障が出るときは、医療機関に相談し、治療を検討しましょう。
5. おわりに
うつ病は季節の影響を受けやすい病気です。
秋から冬の気分の沈みや体調の変化を「気のせい」と片づけず、生活のリズムを整えることから始めていきましょう。
少しずつでも、心と体が季節の変化に適応できるようにしていくことが、回復への第一歩です。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


