うつ病からの職場復帰:焦らず続けられる働き方のために
2025年12月8日(月)
うつ病で休職すると、「いつ職場に戻れるのか」「また体調が悪くなるのでは」と不安がつきまといます。復職に迷いや緊張があるのは当然のことです。
しかし、無理をして早く復帰すると、復職後に体調を崩して再び休職となることがあります。復職には慎重な判断が必要です。
1. 復職の判断基準:「症状ゼロ」だけでは不十分
復職で本当に大切なのは、仕事を続けられる見通しが持てるかどうかです。そのためには、次の三つが揃っていることが望まれます。
一つ目は、生活リズムが整っていることです。
出勤時間帯に起きて、日中に安定して活動できる状態になっているでしょうか。うつ病になると生活リズムが乱れます。これは復職判断において最も基本となるポイントです。
二つ目は、復帰後の業務負荷に耐えられる見込みがあることです。
体力と集中力が回復し、仕事を再開しても大きく調子を崩さないかどうかを確認する必要があります。
三つ目は、仕事に戻ることへの安心感があることです。
「この職場なら安心して働けそうだ」「こんな働き方をすれば大丈夫だ」という見通しが持てることが大切です。
焦りではなく、安心感がある状態。これが、復職に必要な条件が整ったサインです。
2. 安定した復職のために必要な段階的な準備
次のような準備が、復帰後の安定度を高めます。
まず、生活リズムの安定です。
就寝・起床時刻を固定し、平日と同じペースで過ごす習慣を整えます。
次に、体力と集中力の確認です。
散歩や軽い運動、読書や自宅でも軽いデスクワークなどを通じて、どれくらい活動できるのかを把握します。
三つ目は、段階的に心身を仕事に慣らすことです。
まず、午前中のみ活動してみる、職場復帰への通勤ルートを試す(通勤訓練)、決まった時間に作業をするなど、無理のない範囲で少しずつ負荷を高めていきます。
なお、当院のデイケアではリワークプログラムを実施しており、生活リズムを整える、少しずつ負荷をかけるリハビリに活用される患者さんが多くおられます。
3. 焦らず、自分のペースで復職を進める
休職が長くなると「早く戻らなくては」と焦りやすくなります。しかし、焦って復帰すると再発しやすく、結果的に回り道になることがあります。
復職の目的は、これまでの職場に安定して勤務することであり、一時的に職場へ戻ることではありません。
あなた自身のペースで、自然に安心感が整うまで準備を進めることが、安全で確実な復職への道です。
おわりに
復職はうつ病が回復するプロセスの中で実現していきます。生活リズム、体力、安心感があることで、復帰後の仕事は着実に安定していきます。
無理のないペースで、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


