今年も何も変わらなかった、と思っていませんか

今年も何も変わらなかった、と思っていませんか

2025年12月29日(月)

年末が近づくと、診察室ではこんな声をよく耳にします。

「今年も仕事ができなかった」
「何も変わらなかった気がする」
「自分の人生だけ止まっているように感じる」

年末に一年を振り返ると、かえって気持ちが重くなってしまうことは少なくありません。
そう感じてしまうのは、今のこころの状態にとって、年末という時期が少し重たいからなのです。

不眠、動悸、息苦しさ、強い疲労感、気分の落ち込み。
こうした症状が続くと、多くの方が自分を責めてしまいます。
しかし症状は“敵”ではありません。
症状は、こころと身体が「これ以上無理をしないでほしい」と伝えている警告反応です。

負担が限界を超えたとき、身体はあえてブレーキをかけます。
それは壊れないための防御であり、こころと身体を守る反応でもあります。

「症状と向き合う」とは、我慢したり気合で乗り越えることではありません。
身体の声に耳を傾けることです。
どこまで動くと疲れが残るのか、どのくらい休むと回復するのか。
そのようにして症状と向き合って生活してきたこの一年は、
決して「止まっていた一年」ではありません。

回復の途中にある方にとって、年末は、
こころと身体を整え、これ以上消耗しないための時期です。
整えるとは、何かを達成することではありません。

  • 自分のペースを守る
  • 他人と比べない
  • 身体の声に耳を傾け、対話する

この三つを大切にして過ごすことです。

今年、目に見える成果が少なかったとしても、
ここまで症状と向き合って生きてこられたこと自体は、大切な歩みだったと思います。
年末年始は、これ以上消耗しないように過ごす。
すると、こころは少しずつ回復していくのです。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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