不安障害では、身体に症状が出てきます
2026年1月26日(月)
診察室で不安障害(パニック障害、社交不安症、全般性不安症など)の患者さんとお話ししていると、多くの方がこう言います。
「気持ちの問題だと思っていたのに、なぜこんなに体が苦しいのでしょうか」
「心臓が悪いのではないかと検査をしても、異常がないと言われました」
不安障害は、「心配しすぎ」という心だけの問題ではありません。
多くの場合、身体の症状が前面に出てきます。
なぜ、心の問題が身体に出てくるのか
私たちの身体には、危険を察知すると瞬時に身を守る準備をする仕組みがあります。不安障害ではこの働きが過敏になり、命に問題がない場面でも「緊急事態のスイッチ」が誤って入ってしまうのです。
その結果、動悸、息苦しさ、震え、めまいといった症状が起こります。これはすべて、脳が送った「警戒信号」に対して、身体が反応した結果です。
「また動悸がしたらどうしよう」と身体に意識を集中させるほど、感覚はますます過敏になり、さらに症状が強く感じられてしまう。この悪循環が、不安を大きくさせていくのです。
身体の症状を「敵」にしないこと
こうした症状が起きると、私たちは「消し去りたい」「起きてほしくない」と、症状を敵のように扱ってしまいます。しかし、排除しようとすればするほど、さらに症状にとらわれてしまいます。
大切なのは、「症状をなくす」ことを目的とするのではなく、「症状があるままでも、今できることをしていく」という姿勢です。
身体の反応は、自分を守ろうとして一生懸命に働いている結果にすぎません。自律神経の反応は一定の時間が経てば、落ち着きます。その不快な波を無理に抑え込まず、波が去るのを待ってみるのです。
身体の声を聴きながら、生活を調整していく
「症状をゼロにする」という目標を手放すと、心は少しずつ自由になります。
今日は、どの程度の外出なら身体が落ち着いていられるか。
どの場所に行くと、身体が「警戒信号」を出しやすいか。
自分の身体が今、どのくらいの負荷なら耐えられるのかを確かめながら、生活を少しずつ調整していく。無理に症状を抑え込むのではなく、「今は身体が守ろうとしてくれている」と受け止め、目の前の家事や仕事に少しずつ手を着けていく。
そうしているうちに、自分の意識が身体から外へ向いたとき、気づけば症状の波が静まっていくのです。
おわりに
身体に症状が出ているのは、あなたの意志が弱いからではありません。
身体が、自分を守ろうとしている証拠です。
その身体の声と対話し、焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。 その積み重ねが、不安を少しずつ小さくしていきます。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


