前回のブログでは「考えない練習」について書きましたが、「正現寺」(山口県)と「月読寺」(東京・世田谷)の住職である小池龍之介さんが「考えない練習」という本を出しています。「考え過ぎ」について書かれた本はあまりなく、大変貴重な一冊です。
この本では、空回りする考えを「思考という病」と表現しています。著者は、「人は、落ち着いている時には、あまりあれこれと考えません。混乱している時ほど、考える量や時間が増えてしまいます。」と書いていますが、これは心の病気にとても良く当てはまります。心の病気の時には、同じことを繰り返し考えて時間を使い過ぎているからです。
著者は「思考という病」からの脱却のため、「感覚に能動的になること」をすすめています。つまり、「見る」「聞く」「嗅ぐ」「味わう」「感じる」といった五感を積極的、能動的に使うことで、考えごとに引きずられることなく、今この瞬間の情報をはっきりと認知するようになる。その結果心が充足感を覚えるようになるというのです。
前回のブログで書いたように、考え過ぎている時には、「心の視野狭窄」ともいうべき状態にあります。ですから、自分の周囲の風景、音、匂い、味などの情報に無頓着になってしまいます。五感を積極的に使うことで、五感をつかさどる脳の部位が活性化され、過剰に活性化された思考をつかさどる脳の部位とのバランスが取れると思います。
ある患者さんにこの本を紹介したところ、考え過ぎた時には、「聞く」という感覚を積極的に使い、会社のエアコンの運転音に耳をすませたそうです。すると考えごとに引きずられることが少なくなったそうです。
心の健康を保つ上で、考え過ぎへの対処は大変重要な課題です。考え過ぎで悩んでいる方は、ご一読することをお勧めします。
考えない練習
著者 小池龍之介
出版社 小学館
院長 高橋道宏