10月1日 月曜日
注意欠陥多動性障害(ADHD)では、 「細やかな注意ができず、ケアレスミスを起こしやすい。」「注意を持続することが困難」といった不注意症状と「落ち着きがない」「相手の言っていることを良く聞かないですぐに答えてしまう」という多動性、衝動性の症状がみられることが世間一般に広く知られています。
確かにケアレスミスがなくなり、集中力が続くようになると学業成績は向上していきます。私の治療したADHDの子供さんたちは、治療により成績が格段に向上しました。クラスでもほとんど最下位に近い成績だったのが、半年ほどで平均点位になった方もいました。
その治療効果には、主治医である私自身本当に驚くばかりです。では、ケアレスミスを起こさなくなり落ち着きが出てくれば、それでハッピーエンドなのでしょうか?
例えば、ADHDの方では目の前のことにとらわれ、本当に集中しなければならないことに注意が向かないことが良くあります。学校に遅れそうになっているのに、朝シャワーを浴びたり、机の上の片付けをしてしまいます。
次の日になると同じ間違いをまた繰り返してしまいます。自分が興味のあることに集中し過ぎてしまい、本当に集中しなければいけないことへの切り替えが難しいのです。
遅刻など時間に遅れる原因としては、行動に時間がかかるということがありますが、それだけが問題なとではありません。本当に大切なことがわからない、行動する上で優先順位がつけられないことが問題なのです。
優先順位をつけて計画的に行動する機能は実行機能と言われています。実行機能が障害されると、以下のような問題が出てきます。
・自分で計画を立てて行動することができない
・優先順位がつけられない
・人に指示してもらわないと何もできない
・いきあたりばったりの行動をする
実行機能障害は、ADHDのより根本的な病態と考えられます。特に社会に出ると、複数の仕事を並行してこなすことを要求されます。そのため実行機能障害は職場不適応の原因となる可能性が高いのです。
単にミスをしないだけではなく、自分で計画を立て、優先順位をつけて行動できるようにする必要があります。そのためには、薬を飲むだけではなく、このような問題について主治医から療養上の指導を受けることが大切です。
院長 高橋道宏