2019年2月4日 月曜日
うつ病の治療では、脳内のセロトニンを増やす抗うつ薬を使います。セロトニンは感情に関係がある神経伝達物質です。ストレスは脳内でセロトニンを減らし、うつ病を引き起こす原因になることが知られています。
初めて抗うつ薬による治療を受けた方の少なくとも3分の2は、治療によりほぼ病前の状態に戻ります。しかし、良くなったからといって服薬をすぐにやめるやけにはいきません。服薬を中止すると、再発の恐れがあるからです。では、抗うつ薬はいつまで飲み続けなければならないのでしょうか?
抗うつ薬の服薬中止に伴う再発については、これまでに多くの研究が行われてきました。典型的な研究は、抗うつ薬を続けた場合と止めた場合の再発率を比較するものです。これまで行われた多くの研究で、抗うつ薬を続けた方は、抗うつ薬を止めた場合と比べて、再発率が非常に少ないことが示されています。
このため世界各国のうつ病治療ガイドラインでは、症状がなくなってから、初発の方で4-9ヶ月、再発の方では2-3年程度は服薬を続けることを勧めています。
うつ病は、良くなってから過去を振り返ると、ふしぎと辛かった時の気持ちをを忘れてしまうことが多い病気です。辛かった時のことを忘れ、自己判断で服薬を止めてしまうのです。
抗うつ薬は、効果が感じられるまでに約2週間から4週間かかる病気です。逆に言うと、服薬を止めたといってても、すぐに効果がなくなるわけではありません。偶然薬を飲み忘れた時に症状が悪化しなかったことから、もう抗うつ薬がなくても大丈夫だと過信する方が多くおられます。
初発のうつ病で再発に至るのは50%程度、再発した方では75%程度にもなります。良くなったからといって、自己判断で薬を止めないようにしましょう。再発予防の服薬をしっかり続けましょう。
再発予防のための服薬期間を終了した後、薬を止める前には、主治医に相談するようにしてください。本当に症状が全てなくなったのか、うつ病を引き起こす原因となったストレスや物の考え方はなくなったのかなどを総合的に判断する必要があるためです。
院長 高橋道宏