2024年11月11日(月)
うつ病は精神的な症状だけでなく、身体的にも多くの影響を及ぼします。その一つが「眠気」です。うつ病では、なぜ眠気がみられるのでしょうか?また、うつ病期の眠気にはどのように対応すべきでしょうか?
なぜうつ病になると眠くなるのか?
うつ病による眠気は、以下の要因が複雑に絡み合っています。
1. エネルギーの消耗
うつ病における眠気の多くは、エネルギーの消耗によるものです。うつ病の症状によって、何事にも興味や意欲を持てず、精神的・身体的なエネルギーが枯渇してしまうため、日常生活の些細なことにも疲労を感じやすくなります。
うつ病の眠気には、眠気に疲労感、そして疲れやすさが伴うことが特徴です。このような眠気は、うつ病からの回復に伴って徐々に軽減し、やがてなくなっていきます。
2. 睡眠の質の低下
うつ病になると、夜間の不眠や途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」などが生じやすくなります。このため、夜間の睡眠が浅くなり、十分な休養が取れず、日中に眠気が生じやすくなります。
また、睡眠の質が低下すると、気分や思考にも悪影響を与え、悪循環を引き起こします。
3. 治療薬の副作用
うつ病の治療には抗うつ薬の他に、睡眠を助けるための「睡眠薬」や不安を和らげるための「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」などが併用されることがあります。
これらの薬は眠気を引き起こし、日中の眠気の原因となることがあります。睡眠薬や抗不安薬は、体内で長い時間作用するタイプだと、翌日の日中まで眠気が残る場合があります。
一方で、抗うつ薬は一般的に強い眠気の原因となるものは少ないです。抗うつ薬の副作用で眠気が出ることもありますが、他の治療薬と比べて眠気は軽く、発生率は少ないと言えます。
そのため、眠気が強いからと言って、自己判断で抗うつ薬を中止するのは避けた方が良いです。薬の種類や量について調整が必要と感じる場合は、医師と相談することが重要です。
眠気に対処する方法
うつ病に伴う眠気は、無理に抑えることは難しいため、適切に対処することが重要です。以下の方法で日常生活の質を向上させていきましょう。
1. 規則正しい生活リズムを保つ
規則正しい生活リズムを心がけることは、うつ病の症状からの回復を促し、眠気を緩和します。特に、毎日同じ時間に起きて朝の光を浴びることで体内時計がリセットされ、昼間の覚醒度が高まります。
2. 軽い運動を取り入れる
軽い運動は、心身を活性化させ、気分を改善する効果があります。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で行うことで眠気も和らいでいきます。
3. 昼寝をする
日中に眠気が強い場合は、短時間の昼寝を取り入れることが効果的です。長時間の昼寝は夜の睡眠に影響を及ぼすため、時間を決めて短くするのがポイントです。
4. 治療薬の調整について医師と相談する
睡眠薬や抗不安薬による副作用が感じられる場合、医師と相談し、薬の種類や量、服用のタイミングなどを調整することが重要です。
5. リラクゼーションの実践
ストレスや不安が眠気を引き起こすことがあるため、深呼吸や瞑想などで心身を落ち着かせる時間を意識的に持つことも有効です。
最後に
うつ病と眠気の関係は個人差があり、全ての人に同じ対処法が効果的であるとは限りません。自分に合った対処法を見つけるためには、日常生活のリズムを整え、医師と相談しながらその人に合ったやり方で対策を進めることが大切です。
しっかりと休養を取り、無理のない範囲で生活を改善することで、うつ症状が緩和し、眠気の改善につながります。うつ病の眠気は必ず乗り越えることができるのです。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏