2025年4月28日(月)
1. 予期不安とは?
不安障害に特徴的な症状は、「予期不安」です。
実際には何も不安になることが起きていないにもかかわらず、
「また発作が起きたらどうしよう」「また体調が悪くなったらどうしよう」と、
将来の不安を予期して苦しむ状態のことです。
予期不安は、不安障害、特にパニック障害でよく見られる症状です。
2. 予期不安はなぜ悪循環になるのか?
予期不安は「また不安を感じたらどうしよう」という心配から始まります。
このため、外出を控えたり、人と会うことをやめたりします。
これで一時的に安心感を得られるかもしれません。
しかし、この「逃げてしまった経験」が、
「やっぱり自分は不安に耐えられない」という気持ちを強め、
さらに不安を強くしてしまうのです。不安は逃げれば逃げるほど、自分を追ってくるのです、
こうして、行動範囲が狭まる、さらに不安になる。悪循環に陥ります。
3. 予期不安をどう扱うか?
不安をなくそうとしても、不安はなくなりません。
むしろ、不安を感じること自体は悪いことではありません。不安を感じても、ありのまま受け入れるのです。
大切なのは、不安を感じても、それに振り回されず、必要な行動を続けることです。不安になると、考えごとばかりし、目の前の必要な行動がおろそかになるからです。
「不安を消す」「不安を感じないようにする」のではなく、不安を自然に受け止め、「不安があっても行動する」
この姿勢が、回復への道になります。
4. 「予期不安を乗り越えるための行動」とは?
予期不安を乗り越えるためには、「不安があっても、しなければならないことをする」ことが大切です。
これを「目的本位」の行動と呼びます。
たとえば、
- 「今日は仕事に行く日だから行く」
- 「今日は買い物をする予定だから買い物に行く」
- 「今日は通院の日だから通院する」
このように、「今やるべきこと、しなければならないこと」を淡々と行動するのです。
行動するといっても、やらなくてもよいことを無理にやるよりも、
現実に必要な行動を着実にこなすことが、現実感があり、効果的です。
なぜなら、予期不安とは、あくまで「まだ起きていないこと」への不安、
つまり実態のない非現実的な想像に過ぎないからです。
現実の行動を積み重ねることで、不安に振り回されない心が育っていきます。
5. 予期不安を乗り越えるための実践ポイント
- 不安があっても、予定していた行動は実行する
- 「不安でもできた」という体験を少しずつ積み重ねる
- 失敗を気にしすぎず、継続することを重視する
- 完璧を目指さず、「できた部分」を素直に喜ぶ
行動そのものに焦点を当て、不安になることをを考えなくすることで、自然と予期不安は小さくなっていきます。
最後に
予期不安に対しては、
不安を抱えながらでも、やるべきことを淡々と実行していく。
それが、予期不安を乗り越え、回復へ向かうための最も確かな道です。
不安があっても、不安を自然にありのままに受けとめる「あるがまま」と必要な行動を続けると「目的本位」の行動を大切に、
焦らず、一歩ずつ現実に向き合っていきましょう。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏