そのつらさ、もしかしてPTSDかもしれません ― 心に残る「傷」との向き合い方

2025年7月7日(月)

「ふとしたことであの時の記憶がよみがえる」
「音や光に過敏になって、びくっとしてしまう」
「人混みや夜が怖くて眠れない」

そんな体験に心当たりはありませんか?
それは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)かもしれません。命の危険を感じるような出来事や、重大な精神的ショックを体験したあと、時間がたっても心と身体が反応し続けてしまう状態を指します。

PTSDとは?

PTSDは、強い恐怖や無力感を伴う体験のあとに生じる精神疾患です。災害や事故、暴力、虐待、いじめ、突然の喪失などがきっかけとなることが多く、誰にでも起こりうる「心の傷」の反応です。

つらい体験を乗り越えようと必死にがんばっている方、または身近な人の変化が気になっている方もいらっしゃるかもしれません。

PTSDの主な症状

PTSDでは、以下のような症状がみられることがあります。

  • 再体験症状(フラッシュバック):突然あの時の光景や音がよみがえる
  • 過覚醒:音や刺激に敏感になり、眠れなくなる、いつも緊張している
  • 回避行動:思い出すのが怖くて、場所・人・会話を避ける
  • 感情の鈍さ:喜怒哀楽が出にくくなる、周囲から浮いてしまう感覚
  • 罪悪感や自己否定感:「自分が悪かったのでは」と自分を責める

これらは単なる気のせいではなく、脳の「防衛本能」が過剰に働いている状態です。

誰にでも起こり得る「こころの傷」

PTSDは、特別な人だけがなるものではありません。誰にでも、心が大きなストレスを受ければ起こり得る「こころの反応」なのです。

時間が経ってもつらさが消えない、自分でもどうしたらいいかわからない――そんなときは、一人で抱え込まずに、その体験を「話してもいい」と思える場所を見つけることが大切です。

治療について

PTSDの治療では、以下のような方法が組み合わされます。

  • トラウマに焦点を当てた精神療法(治療者とトラウマの体験を共有し、段階的に心の整理をしていく)
  • 薬物療法(不安・過覚醒を抑える薬の使用)

つらい体験を「消す」のではなく、「それがあったことを認めながら、今を生きていく」方向へ向かうことが基本となります。

最後に ― 回復には「時間と安心」が必要です

トラウマは、無理に忘れようとしても、よけいに思い出して苦しくなることがあります。
大切なのは、「心の傷も、身体の傷と同じように時間とともに回復していく」という視点を持つことです。

つらい体験を語れる場所や、少しずつ安心を感じられる時間を持つことが、
少しずつ自分を取り戻す第一歩になります。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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