薬はなぜ効くのか? 統合失調症

image10月20日 月曜日

統合失調症は、病気のはじまりの急性期には幻覚、妄想などの症状が目立ち(陽性症状)、ある程度時間が経った慢性期には、陰性症状といって、感情が鈍くなったり(感情鈍麻)、自分の殻に閉じこもったり(自閉)、意欲低下がみられる病気です。治療をしないと症状が次第に進行してしまうため早期治療が大切ですが、統合失調症には薬による治療がとても有効です。

統合失調症になぜ薬が効くのでしょうか?統合失調症では、脳内のドパミンと呼ばれる物質の働きが過剰になっていて、この過剰なドパミンの働きを抑えるように働く抗精神病薬が幻覚や妄想なと陽性症状の治療に有効です。

ドパミンは快楽にも関係する物質で、麻薬や 覚醒剤はドパミンを増やします。麻薬や覚醒剤を使い続けると、増えたドパミンが脳内で刺激となり、幻覚や妄想がみられるようになります。

ですから、統合失調症の幻覚や妄想といった症状は、脳内で過剰になったドパミンの働きと関係していて、抗精神病薬と呼ばれる薬はドパミンの働きをブロックすることで症状を改善しています。

慢性期にみられる意欲低下などの陰性症状は、セロトニンの働きの関与がわかっていて、セロトニンの働きを改善する薬が有効です。

このように薬による治療は、統合失調症でみられる脳内のドパミン、セロトニンなどの異常を改善することで症状を改善しているのです。

抗精神病薬は1950年台に発見されましたが、それ以前は統合失調症にはこれといった治療法がありませんでした。

抗精神病薬が治療に利用されるようになり、患者さんは、症状が落ち着いて、病院から退院したり、働けるようになりました。最近では、薬の発達のおかげで、精神科の病院に長期に入院する方が少なくなりました。

統合失調症では、長期に薬を飲むことになりますが、海外では薬を飲んでいた患者さんの方が長生きしていたという研究結果があります。

1990年代以降に使用されるようになった抗精神病薬は、陽性症状にも陰性症状にも有効です。このような抗精神病薬は、患者さんの生活の質(QOL)を改善するというデータも多くあります。わかりやすくいうと、患者さんが働けるようになったり、一人暮らしできるまでに症状が改善したということです。

このように薬は統合失調症の患者さんの社会復帰を助けてくれるパートナーなのです。

院長  高橋道宏

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