少し運動するだけでもうつ病は予防できる?

うつ病は発病すると長期の治療が必要になり、病気を発病したご本人の苦痛はとても大きく、ご家族の心労も想像に余りあります。職場を休業することによる社会的コストも大きなものとなっています。順調に治療が進んでも初期治療に3ヶ月、その後の再発予防には少なくとも6ヶ月の期間が必要です。発病した場合はあせらず腰を落ち着けて治療することが必要ですが、一方うつ病の予防は社会的な重要課題となっています。

うつ病の予防方法としては、従来から規則正しい生活、長時間勤務の抑制、職場の相談体制の充実などが挙げられており、最近になり厚生労働省は「5分でできる職場のストレスチェック」(興味のある方は左記の青字をクリック)というストレスのセルフチェックのサイトを誰でも利用できるように整備しました。このようにうつ病予防の社会的重要性が高まる中で、近年「運動とうつ病予防」に関する注目すべき論文が海外から発表されています。(カナダ・トロント大学、George Mammnen氏ら)

この論文では「運動とうつ病の予防の関係」に関する過去30件の研究を調査し、その結果「運動はうつ病の予防に役立つ可能性がある」と結論しています。1つだけの研究では、本当にその結果を信じて良いのかわかりくいのですが、この研究は過去の多くの論文を調査し結論しているため、より信憑性が高いと思います。この論文では「1週間当たり150分未満の散歩程度の運動でもうつ病予防に役立つ」と結論しています。「少し運動するだけでもうつ病は予防できる?」かも知れません。

私もこれまで運動はストレス解消に役立つと感じていましたから、この論文を読んで納得感はとても強いです。また、うつ病は「憂うつ感」「意欲が出ない」などの心の症状だけでなく、「疲れやすい」「だるい」など身体の症状も多いことから、運動という身体的アプローチがうつ病予防に有効であることは理にかなっていると思います。平素から適切な運動を取り入れることでうつ病を予防できる可能性が高いことが研究データの点からも明らかになりました。最近は健康ブームでスポーツジムに通う方が多くなっていますが、運動は身体の病気だけでなく心の病気も予防するのですね。心の健康のため、多忙な社会生活の中で運動する時間を少しでも定期的に取るようにしてみてはいかがでしょうか?うつ病は再発予防が大切ですから、診察の時には体調に応じた運動について積極的にアドバイスしていきたいと思います。

参考論文
Physical Activity and the Prevention of Depression. A Systematic Review of Prospective Studies)
American journal of preventive medicine誌2013年11月号の報告。

院長  高橋  道宏

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