こころの病気の治療では、約50年前から薬が使われています。薬による治療で症状が目に見えて改善するようになりました。その後の進歩で、より副作用が少なく、効果的な薬が多く開発され、医療に大きな貢献がありました。薬の進歩により、患者さんの症状が目に見えて改善するようになると、精神科リハビリテーション(デイケア、作業療法)も盛んになり、大きく発展しました。
薬による治療は、特に統合失調症、うつ病などで大きな力を発揮しています。統合失調症ではドパミン、うつ病ではセロトニンという脳内物質(神経伝達物質)の異常がみられることがわかり、この異常を改善する治療薬を開発されたことによります。また、アルツハイマー型認知症、最近では注意欠如多動性障害(ADHD)の治療薬が医療に貢献しています。アルツハイマーではアセチルコリン、ADHDではドパミン、ノルアドレナリンの異常を改善することが治療効果につながっているのです。
このよう薬は治療を助けてくれますが、薬の飲み方をご自身の判断で変えてしまい、薬の効果が十分みられない患者さんがいます。薬は服用しても、その成分が脳に到達し効果が出始めるまでに、少なくとも30分から60分程度かかります。薬は飲んでもすぐには効かないのです。飲んでもすぐに効かないからといって、不安になり次々と処方量より多く薬を飲んでしまう患者さんがいます。特に、睡眠薬や頭痛薬でその傾向が強いと思います。薬は多く飲んだからといって、どこまでも効果が上がり続けるわけではありません。ある一定の量になると効果は頭打ちになり、かえって副作用が出やすくなります。
薬は飲んだからといってすぐに効くわけではありません。睡眠薬や抗不安薬のように一度服用するとすぐに効果がある薬でも、効果がみられのは30分から60分はかかります。また、抗うつ薬などは少なくとも2週間から4週間程度服用しないと効果が現れません。効果がすぐに出ないからと言って、自己判断で薬を多く飲み過ぎたり、やめてしまわないようにしましょう。薬は飲み過ぎても、毛嫌いしても治療は上手くいきません。処方された薬について疑問がある場合は遠慮なく主治医に質問するようにして下さい。
院長 高橋道宏