2016年10月10日 月曜日
こころの病気の治療に携わっていると、時おり処方薬を自分で調節する患者さんが見受けられます。「最近とても調子が良いので薬を減してみよう」とか、逆に「良く眠れないので薬を多めに飲んでみよう」などと考え自分で薬を調整するのです。また、「ネットでこのクスリを飲むと良くないと書いてあったから」と薬を飲むのを止める方もいます。
このような薬の自己調整の背景として、「自分のこころの状態は自分で判断できる」と考えてしまいやすいことがあげられます。「自分のことは誰よりも自分が一番良くわかっている」「薬を長い間使っているので、どの薬が効いてどの薬が効かないか良くわかっている」などと考えるのです。しかし、本当に正しく自己判断できるのでしょうか?
確かにこころの病気の自己と向き合い、これまで以上に自分を良く理解できるようになることもあるでしょう。一方、こころの病気では自己を客観的に把握することが困難になります。例えばうつになると、自己に対して否定的、悲観的になります。不安になると、いつも自分の病気のことばかり考えとらわれて、自己を客観的に判断できにくくなります。
自己判断で服薬を中止することで病気が悪化したり再発することがあります。自己判断で薬を多く服用することで副作用が出たり、薬物依存になることもあります。自分の思い込みで薬が効いているように感じられたり、病気そのものの症状を副作用と誤解することもあります。薬は自分で調整しないで、疑問がある時はまず主治医に相談してみましょう。
院長 高橋道宏