薬の副作用をどう考えるべきか?

2018年12月24日 月曜日

心の病気の治療では、約70年程前からお薬が使われるようになり、治療は大きな進歩を遂げました。

それまでには有効な治療の方法がなかった心の病気は、その症状が大きく改善するようになり、患者さんの生活は劇的に変化していきました。

例えば、うつ病ではうつ状態を引き起こす脳内のメカニズムがある程度解明されています。意欲や感情に関係するセロトニンという神経伝達物質の働きが脳内で低下するとうつ病になると考えられています。

このため、脳内でセロトニン濃度を上昇させる抗うつ薬による治療は、合理的な治療ということができます。

お薬の副作用を心配する方もおられます。お薬を処方してもらったが、副作用が心配で全く飲めなかったというお話を聞くこともあります。

添付文書といわれる使用説明書に副作用が1つも書かれていない薬はありませんが、薬を飲んだら副作用が必ず起きるというわけではありません。

副作用情報は、何万人も何百万人もの患者さんが服用した結果、ごく少数でも報告があれば副作用として記録され、情報は定期的に更新されています。この結果、薬の使用説明書にはかなり多くの、発生頻度の低い副作用も列挙されているのです。

心の病気になる方は、身体の症状に対する不安が強く、薬の副作用の話を聞くと、すべての副作用が高い確率で自分に発生すると錯覚してしまいがちです。

そのような思い込みが自己暗示となり、本当に副作用のような症状がみられることもあります。特に頭痛、めまい、吐き気などは自己暗示によっても起きることがあります。すぐに副作用と決めつけないように注意が必要です。

また、うつ病などでは、頭痛、めまい、胃腸症状、身体のだるさなどはうつ病の症状として発生しているのに、副作用のようにみえてしまうことがあります。

どれが本当にうつ病の症状でどれが副作用なのかを正しく見極めることが大切です。この判断を間違えると、本当はうつ病の症状なのにうつ病を治療する薬をやめてしまうなど、治療は誤った方向に進んでしまいます。

副作用については自己判断に頼るのではなく、客観的に第三者による判断に耳を傾ける必要があります。ほとんどの薬はリスク(副作用)は少なく、ベネフィット(効果)が大きいため、服用するのに大きな心配はいりません。

お薬について過度な不安があると、結果的に薬の恩恵にあずかれなくなり、大きな損失となります。お薬について心配がある時には、信頼できる主治医に相談してみましょう。心配や疑問を払拭し、安心して治療を続けるようにしましょう。

院長 高橋道宏

アーカイブ

PAGE TOP