ADHDの治療で最も大切なこと

2019年4月1日 月曜日

注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意と多動性・衝動性の症状が認められます。この中で不注意症状は、多動性・衝動性よりも多くの方に認められます。また、不注意症状は、大人になっても症状を持ち越しやすく、治療上の配慮が必要な症状です。

不注意症状で代表的なのは、集中困難です。集中困難という症状があると、仕事や勉強に集中しようとしても、すぐに気が散ってしまい、集中できないのです。

集中困難は、多くのADHDの方に認められる症状ですが、一方ADHDでは、過集中がみられることもあります。ADHDの過集中は、自分の興味がある特定のことにだけ向けられます。自分の興味のないことには、必要なことでも集中できません。

ADHDにみられる過集中では、自分の興味のあることだけに集中してしまう、細部にこだわって過度に集中してしまいます。これは発達障害の一般的な特徴に相通じるものがあります。

ADHDの治療で使われるお薬は、脳の覚醒水準を上げ、より集中しやすい状態をつくりだしてくれますが、それだけではありません。自分のやるべきこととそれでないことを区別し、優先順位をつけやすくしてくれます。

これはお薬が脳の前方に位置する前頭前野に作用して、行動、思考、感情をコントロールする力(実行機能)を改善してくれるからです。

ADHDの治療では、行動の優先順位をつけ、自分の興味関心を優先するのではなく、その時になすべき行動に集中できるようにすることが大切です。行動をコントロールできるようになっていくこと、これこそがADHDの治療にとって最も大切なことなのです。

お薬は行動、思考、感情をコントロールしやすくしてくれます。それと同時に、治療者の適切な生活指導により、ADHDの方自身がそのような方向で自己努力していくことも大切です。

院長 高橋道宏

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