2019年7月8日(月)
不注意や多動性や衝動性といった特徴を持つ注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、学校の授業中にじっとしていられない、仕事でうっかりミスが多いといった行動が目立ちます。治療の有力な選択肢として薬による治療があります。
これまでの研究結果からADHDでは脳内の神経伝達物質であるドパミン、ノルアドレナリンの働きに異常があることがわかっています。薬による治療でドパミン、ノルアドレナリンの働きが正常化すると症状は改善していきます。
当院の経験ではほとんどの患者さんは、薬で症状が改善します。一方で、「どのような基準で薬を飲めば良いのか?」「いつまで薬を飲めば良いのか?」との質問が患者さんやそのご家族から寄せられています。
国内外の学会による治療ガイドラインの多くは、ADHDの症状が軽症とは言えない状態であるなら薬を飲んだ方が良いと指摘しています。また、薬をどこまで飲むかは、ケースバイケースで考えて良いとされています。
これは、家庭、学校、職場などで症状が日常生活の大きな妨げになるなら、服薬することが望ましい。しかし、成長して症状が軽くなったり、転職して集中力があまり求められなくなった職場に移った場合は、服薬を中止することができるということです。
ADHDで重症な患者さんは非常に少なく、子供の場合は成長の過程で症状が徐々に改善することが期待できますから、ADHDという病名にマイナスのイメージを持つ必要はありません。
主治医と共に症状に向き合い、必要に応じて薬を服用する、ADHDの症状があっても社会適応できるように生活指導を受ける、といった対応をとることで多くの困難は解決に向います。
院長 高橋 道宏