うつ病の時にみられる不安とのつき合い方

2019年7月15日(月)

うつ病になると、精神的なエネルギーが低下して、気分がひどく落ち込みます。また、意欲がなくなり、何もする気がしなくなります。不眠、食欲の低下など身体の症状も認められます。こうした症状が毎日続くため、日常生活が停滞し、仕事の長期休業や不登校の原因になります。

このようにうつ病では、日常生活の活動性が低下しますが、何もできない自分に自責の念を覚え、自己を責める方が少なくありません。本来こうありたいという自分と、そうはできないギャップに悩むのです。その結果起きてくるのが不安です。不安というと、一般にパニック障害のような不安障害が知られていますが、うつ病の時にみられる不安はそれとは異なる特徴があります。

うつ病の不安はうつ病に伴って発生します。ですから、うつ病が回復すると不安もなくなっていくという特徴があります。また、うつ病の不安は焦燥感(しょうそうかん)を伴うことが多いという特徴もあります。焦燥感とは文字通り焦る気持ちのことです。うつ病では不安で焦り、落ち着かない状態が良くみられるのです。

不安になると落ち着いて療養できません。「一生治らないのではないか?」などと悲観的に考え、益々うつが悪化していきます。また、焦りから、まだ治っていないのに出勤しようとするなど、無理な行動をしてしまいます。このような行動はうつを悪化させてしまいます。うつ病の時にみられる不安は、お薬の効きを悪くしうつ病の回復を遅らせてしまうのです。

ですから、うつ病の時にみられる不安をうまく付き合うことがうつ病の治療を成功させます。そのためには、単に抗うつ薬を服用するだけでなく、不安な気持ちを主治医に良く理解してもらい、安心感を得ることが大切です。

本来こうありたいという自分と、そうはできないギャップに悩む不安を払拭し、今の治療を続けていれば、時間がかかっても、必ずうつは治る。そのためには一時的にこのようなギャップは受け入れるいう気持ちを持つことが大切です。そのような気持ちが、迷いのない療養生活につながり、うつ病の治療を成功に導くのです。

院長 高橋道宏

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