ADHD の治療薬に優劣はあるのか?

2019年9月15日(月)

ADHD(注意欠如多動性障害)は、発達障害の一つですが、最近他の発達障害よりも身近な存在になりました。インターネット上に情報が多く、「自分もADHDではないか?」とクリニックを訪れる方が多くなりました。

これは発達障害の中で唯一ADHDだけに有効な治療薬が存在することと無縁ではないでしょう。他の発達障害には有効な治療薬が存在しないのですが、ADHDには有効な治療薬が存在するのです。

ADHDには不注意と多動性・衝動性の二つの症状があります。不注意は集中力のなさによる症状です。集中力が乏しいから人の話をきちんと聞くことができず、ケアレスミスが多発します。やるべきことが頭の中で整理できず、優先順位がつけられません。

一方、多動性・衝動性は落ち着きのなさによる症状です。落ち着きがなく、じっとしているのが苦痛でソワソワしてしまいます。順番が待てずに割り込んでしまいます。人の話を最後まで聞かずに答えてしまうので、コミニケーションがうまくとれません。

ADHDでは脳の前頭葉にあるドパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質(情報を伝える化学物質)の働きが不十分であることがわかっています。また、ADHDでは脳を使った時に前頭葉で増加するはずの脳血流が増加しにくいことも知られています。

ドパミン、ノルアドレナリンなど神経伝達物質の働きを正常化するために、お薬はとても有効な手段です。日本ではADHDの治療薬が3種類ありますが、どのお薬も神経伝達の働きを正常化させることでADHDの症状を改善してくれます。その意味は、大きな違いはありません。

国内ではADHDの治療薬は3種類ありますが、お薬が効き始めるまでの立ち上がりの速さには違いがあるものの、長期的に見ると効果は似たり寄ったりで、どの薬が良いかは単純に言えません。ADHDの治療薬に大きな優劣はないのです。

しかしながら、どの薬が誰にどう効くかといった、お薬の効き目の個人差が非常に大きいのです。ある人にお薬が効果があったからといって他の人に効果があるとは限りません。また、ある人に効果がなかったからといって、別の人にも効果がないとも限りません。自分に合ったお薬に出会うことが大切です。

ですから、まだ1種類しかお薬を服用したことがなく、満足いく治療結果が得られていない方は、別のお薬による治療を受けてみることをお勧めします。ある薬の効果がなかった方でも、別の薬に切り替えると効果のある方は50%位はおられます。

お薬が効いてくると、主治医による生活指導と患者さんの自己努力により、症状を乗り越えやすくなります。

今後は自閉症にも有効な治療薬(オキシトシン)が使えるようになりそうですが、現時点では発達障害に有効な治療薬はADHDだけです。しかも、使えるお薬は3種類もあるのです。このメリットを最大限に生かして、ADHDを乗り越えていただきたいと思います。

院長 高橋道宏

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