2020年2月24日(月)
かつてはボケ、痴呆などと呼ばれていましたが、「認知症」という言葉はすっかり社会に定着しました。
認知症では記憶力だけではなく、認知機能も低下します。多くの行動異常は認知機能の低下に原因があり、認知症は妥当な呼び方です。
認知症になると、認知機能が正しく機能しないために、行動がチグハグなものとなります。
たとえば、今日が何月何日かがわからなくなるなります。これは認知症でみられる特徴的な症状です。
「本当は明日が診察日なのに、今日診察に来た患者さん」がおられました。この患者さんは、ご家族と待ち合わせてからクリニックに来る予定でしたが、ご家族がいつまで待っても来ないので、大変立腹しておられました。しかも、この行動は何回も繰り返されました。
また、「部屋の温度が正しく認識できない患者さん」もおられます。夏なのにエアコンを入れない。スイッチを入れてもすぐに切ってしまう。その結果、部屋の温度がひどく上がってしまう。それでも厚着をします。
高齢になると、体温調節機能の衰え熱中症になりやすいので特に注意が必要です。私の友人は、遠方に住むお父さんのもとを訪れたところ、真夏なのにエアコンを暖房になっていました。この友人が行くのがもう少し遅れていたら、大変なことになっていたかもしれません。
認知症への対応は、認知機能のどの部分がどのように機能しなくなったのかを正しく理解することから始まります。問題の本質が正しく把握できると、認知症に伴うチグハグな行動が理解できるようになります。
理解できれば、認知症の方に優しい気持ちで接することができるようになります。また、ちぐはぐに見える行動にどのように対処したら良いかがわかるようになります。
介護は毎日忍耐の連続です。優しくしようと思っても、人間の精神的エネルギーは無限ではありません。
認知症を正しく理解することで、介護疲れによる心のバッテリー切れを予防できます。正しい知識は心の負担を減らすのです。
高橋心療クリニック
芦屋 神戸 西宮 心療内科
院長 高橋道宏