不安障害の薬物治療について

2022年10月17日(月)

メンタルな不調は心身の緊張と深いつながりがあり、精神医療で使われる薬の多くは、不安、緊張を減らす方向に作用します。

典型的なものは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬です。抗不安作用、筋弛緩作用、催眠作用があり、服用後1時間以内に効果が現れます。

しかし、数時間もすれば効果はなくなり、再度服用が必要になります。再服薬を繰り返すうちに薬に依存していきます。

また、毎日、長期間服用すると薬に対する慣れが生じ、効果が薄れていきます。効果が薄れると、薬の増量が必要になってしまいます。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は根本的な治療法とは言えません。風邪の治療で言えば、解熱剤のようなもので、いわば対症療法です。

では、不安障害の治療は薬は飲まず、我慢しているしかないのでしょうか?

不安障害の薬物療法では、SSRIに分類される抗うつ薬を使用することが推奨されています。

SSRIは脳内のセロトニンを増やすことにより、うつだけではなく、不安の治療にも非常に有効です。

抗うつ薬は即効性はないものの、効果は徐々に現れます。数時間ごとに服薬を繰り返す必要がなく、依存性はありません。

症状が徐々に回復するため、薬をやめた時の症状のぶり返しは抗不安薬と比べ起きにくいです。

SSRIによる治療で安定した状態となり、6ヶ月程再発予防の服薬をした後、薬を徐々に減量してみることも可能です。

その結果、特に問題がなければ、服薬を中止することが可能となります。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬による治療では、減量による症状の再発率が高く、服薬をやめることが非常に難しいです。

SSRIは薬をやめることができる可能性が高い、ベンゾジアゼピン抗不安薬よりも根本的な治療方法です。

不安障害の治療は薬を飲むだけでなく、自律訓練法、マインドフルネスなど深呼吸を基本にしたアプローチも大切です。また、森田療法で推奨されている、不安にもかかわらずやるべきことをする行動原則も大切です。

このような薬によらない治療法と薬の効果を組み合わせることで、最大効果か得られます。

薬によらない治療法と組み合わせる上でも、SSRIは依存を引き起こすことのない、すぐれた治療選択肢ということができます。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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