世界一の抗うつ薬は存在するのか?

2016年12月19日 (月)

うつ病の治療では、日々の診察における療養生活上のアドバイスとともに抗うつ薬が回復を大きくサポートしてくれます。日本でも抗うつ薬は50年以上の歴史があり、長年に渡り多くの患者さんの回復を手助けしてきました。現在ではかなり種類の抗うつ薬があり、更に現在開発中のものもあります。しかし、抗うつ薬の種類が増えるにつれ、どの薬が本当に良く効くのかという疑問が生じます。世界一の抗うつ薬、誰にも効く良い薬があれば、医師にも患者にとっても朗報です。

一般的に、抗うつ薬はある薬がはっきりと効くのは、そのお薬を飲んだ人のおよそ3分の2の人です。残りの3分の1は薬がやや効いている人と全く効かない人です。ですから、多くの人に効く薬はありますが、すべての人に効く抗うつ薬は存在しないのです。どの人にどんな薬が効いてどの人に効かないかは、これまでにも多くの研究がなされていますが、仮説の域を出ていません。事前に効果を予想するのは難しく、実際に使用してみないとわからないのです。

抗うつ薬をランク付けることを試みた精神科医の間では有名な海外論文があります。数年前にはその結果が新聞でも報道されました。ある程度参考になる部分があり、私はこの論文も参考にしながら処方を検討しています。しかし、専門的には多くの問題点が指摘されており、これはあくまで参考資料です。また、ネット上では患者さん個人の体験談をまとめ抗うつ薬をランク付けるものもありますが、こちらもある方には良かったかもしれませんが、別の方に同じように効く保証はないのです。

誰にも良く効く世界一の抗うつ薬はありません。どんな薬でも効く人もいれば、効かない人もいます。抗うつ薬を効果の面で順位付けすることは難しいのです。医療現場で使うことができる抗うつ薬はかなり多くあります。主治医と相談しながら、自分に合ったベストの抗うつ薬をみつけることが大切です。また、薬だけではなく、健康的生活、家族や職場の理解など環境を自分に合ったものにすることが、抗うつ薬の効果を最大に引き出し、自分にとってベストなものにすることにつながるのです。

院長 高橋道宏

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